いちご

いちごは、バラ科に分類される北南米原産の多年生植物です【1】。
同じバラ科の食材としてナシ、マルメロ(セイヨウカリン)、モモなどがあります。

いちごの食用部である果肉部は花托という花の一部が発達した偽果になります。
本当の果実は表面についている粒々の部分で乾いている果実であることから痩果と呼ばれます。
いちごは分類上は液果類に分類されます。
液果類は成熟すると果肉細胞がほぼ液胞で占められ外皮以外が多肉・多汁質になります。

この食材のポイント
・いちごの旬の時期は5~6月頃
ただし、クリスマスシーズンに需要が急増するため栽培時期がずれている場合が多い。
詳しくは→1.生産方法と旬の時期 いちごはこのようにしてできる
・いちごは甘味が強い品種と酸味と甘味のバランスがいい品種がある
そのまま食べる場合は甘い品種を砂糖を使った加工品に使う場合は甘味と酸味のバランスのいい品種がおすすめ!
詳しくは→2.いちごの特徴 風味や食感、品種ごとの違いについて
・いちごは葉酸とビタミンCが豊富に含まれている
いちごの主要な食品成分については→3.いちごの栄養評価
・いちごは冷凍保存する場合は甘味を調節するために砂糖を加えるといい。
詳しくは→4.いちごの選び方、調理方法、保存方法
 
りんごの収穫までの流れの例【2】

1.生産方法と旬の時期 いちごはこのようにしてできる

いちごは果実類に分類されますが、草本植物であるため他の果実に比べて栽培が容易です。
品種によって一季なりと四季なりがあり、一季なりは収穫時期は年に1回5月~6月ごろで、対して四季なりは時期を問わず継続的に収穫できる品種です。
四季なりの品種は継続的に収穫できますが味が大味になりやすく土壌の消耗も起こりやすい品種です。
今回は一般的に商品作物として優秀な品種の多い一季なりいちごの春植えでの生産過程について紹介します。
いちごの旬の時期は露地栽培の春植えの場合は5月~6月ごろですが、現在はクリスマスで冬に需要が増えることから冬に収穫できるようにハウス栽培などで定植の時期を5~6月頃にずらす場合があります。

いちごは親株の植え付けを行い、 ①子株の採苗・仮植え ②定植 ③生育を経て収穫されます。
親株の植え付けからいちごの生産を始める場合、最初は収穫までに1年以上かかります。
2年目以降は収穫を終えた株を親株としてあらたな苗を育てることで1年以内に収穫ができるようになります。
いちごは多年性の植物ですが、年を重ねるごとに収量は落ちてくるので新しい苗を育てて栽培を行います。

子株の採苗・仮植え

いちごの栽培は最初に親株から苗を作ることから始めます。
いちごの親株は成長するとランナーという細長い器官を伸ばしそこから子株ができます。。
ランナーの先端に育苗ポットを当てることで根を張り、苗を作ることができます。
子株が土に根を張り本葉が2~3枚生えたところでランナーを親株側に3㎝位残して切り採苗を行います。

定植

定植は9月頃に行われます。
定植が遅く生育が遅れると冬越しできないためタイミングが重要な工程です。
いちごの果実はランナーが生えていた場所の反対側になるため収穫しやすい向きに揃えて定植します。
株の根本にはギザギザのクラウンと呼ばれる器官が生長点になるので、クラウンが土からでるように植えます。

生育

12月~2月の間は休眠期になるのでそれまでに追肥を行い、根の発達を進めます。
0℃以下の寒い環境には弱いため、防寒対策として株元まで藁やポリフィルムを土に被せて保温を行います。

冬越しを終えると新葉が出始めるので枯れた古い葉は摘み取り成長を促進させます。
このタイミングで2回目の追肥を行います。
生育が進むとランナーが生え始めるので収穫までは株を弱らせる原因となるため取り除きます。

いちごの開花時期は3月頃で開花に伴い受粉作業を進めます。
いちごの受粉はミツバチのような虫を媒介として自然受粉を行いますが、むしの少ない時期や環境で開花した場合は確実に受粉させるためには人工受粉を行う必要があります。

収穫

受粉後、約30日ほどでいちごは収穫することができます。
果実の成長過程で形の悪いものは摘果を行う場合があります。

2.いちごの特徴 風味や食感、品種ごとの違いについて

いちごは収穫後は熟成や風味の変化が少ない非クライマクテリック型果実です。
糖をデンプンとして蓄えないので熟成の必要は無く、購入後すぐに食べることができます。
いちごにはペクチン成分が少ないので市販のようなゲル状のいちごジャムを作るためには別でペクチンを添加する必要があります。

いちごの品種はゆめのか、夢いちごのような糖度の高く甘味が強い品種とあまおう、紅ほっぺのような甘味と酸味のバランスのとれた品種があります。
甘味が強い品種はそのまま食べるのに向いていて、甘味と酸味のバランスがいい品種はジャムやケーキなどの砂糖を使った加工品に向いています。

いちごの香気成分

いちごの主要な香気成分はエチルエステルなどのフルーツ系のエステル類です。
特にエチルエステルはパイナップルの香りに例えられています。

その他にもキャラメル臭のフラネオールとグリーン系のアルデヒド類などの香気成分を含みます【3】。
また、いちごはバラ科の植物であることからわずかですがβ-ダマセノンというバラ系のフローラルな香気成分も含みます。

いちごの色素成分

いちごの果実の赤色はアントシアニン色素によるものでそのほとんどはペラルゴニジンの配糖体です。
アントシアニン色素は水溶性の色素であるため水分を多く含む料理では果肉自体の脱色は起こりやすい色素になります。

3.いちごの栄養評価

いちごは日本食品成分表で生の成分値に加え、ジャムや乾燥などの100gあたりの成分値が記載されています【3】。
今回はいちごの生状態での栄養評価をしていきます。

スマホ版は横スクロールで表全体を確認できます。
豊富に含まれている栄養素は濃い色、一定量含まれている栄養素は薄い色で強調表示しています。

    脂質炭水化物
食材名エネルギー    
kcal
水分       
g
たんぱく質    
g
脂質       
g
飽和脂肪酸    
g
n-3系不飽和脂肪酸
g
n-6系不飽和脂肪酸
g
コレステロール  
mg
炭水化物     
g
食物繊維     
g
いちご
3190.00.90.10.010.020.0308.51.4
・(0)は未測定であるが、文献等により含まれていないと推定されるもの
・Trは未測定であるが、文献等により微量に含まれていると推定されるもの
 無機質
食材名ナトリウム    
mg
カリウム     
mg
カルシウム    
mg
マグネシウム   
mg
リン       
mg
鉄        
mg
亜鉛       
mg
銅        
mg
マンガン     
mg
ヨウ素      
μg
いちご
Tr1701713310.30.20.050.200
 ビタミン
食材名ビタミン 
A
 
μg
ビタミン 
D
 
μg
ビタミン 
E
 
mg
ビタミン 
K
 
μg
ビタミン 
B1
 
mg
ビタミン 
B2
 
mg
ビタミン 
B6
 
mg
ビタミン 
B12
 
μg
葉酸   

 
μg
ビタミン 
C
 
mg
いちご
1(0)0.4(2)0.030.020.04(0)9062
・ビタミンA :レチノール活性当量の値を記載
・ビタミンE :α-トコフェロールの値を記載

・ビタミンKの成分値は類似食品から推計や計算により求めた値、または諸外国の食品成分表の収載値から借用した値、原材料配合割合を基に計算した値。

いちごにはビタミンCと葉酸が豊富に含まれており、ほとんどの場合生で食べることから損失なくビタミンCを摂取できる優秀な食材です。

4.いちごの選び方、調理方法、保存方法

いちごの選び方

いちごの選び方は形がきれいで大粒のものがおすすめです。
大きさや形は甘さに関係のないことが多いですがきれいな形のほうが輸送中に傷がつきにくいなどのメリットがあります。
おいしさに関係するポイントは色です。
ヘタの周辺まで赤くなっているものが完熟していて甘くておいしいとされています。
逆にヘタの周辺が白いものは果実に糖が十分に供給される前に収穫されている可能性があります。
いちごの性質状収穫後に甘さは変換しにくいので色は重要な指標です。

いちごの調理方法

下処理

いちごは通常ヘタ付きで販売しており、見た目もいいですが、洗うときにヘタを取り除くのが衛生的です。
いちごにヘタを付けた状態では水で洗ってもヘタ周辺の汚れを取り除くのは難しいです。

調理方法

いちごをジャムやケーキに使う場合はある程度酸味があるほうが味のバランスがとれておすすめです。
ジャムを作る場合はペクチンの多い果物を加えるかペクチンそのものを加えて作るとジャムらしいゲル状の食感になります。

いちごの保存方法

いちごは非クライマクテリック型果実であるため熟成の必要が無く冷蔵での保存がおすすめです。
乾燥を防ぐためラップか保存袋に入れて保存すると長持ちします。
適切に保存した場合の保存期間の目安は1~2週間ほどになります*1。

長期保存をする場合は冷凍保存をします。
へたを取り洗ったいちごを水気をとり砂糖を加えて冷凍保存します。
砂糖を加えるのは冷凍することで落ちたいちごの甘味を補うためです。
また、砂糖によりいちご同士がくっつかないようにする役割もあります。
いちごの品質が落ちるため冷凍保存はおすすめしませんが適切に保存した場合は3ヶ月ほど保存することができます。

*1 紹介する保存方法の保存期間はあくまでも目安です。
食材の状態、保存環境によって保存期間は変化します。
使用する際はカビの有無や乾燥状態、冷凍の場合は冷凍焼けしていないかなど食材の状態を見たうえで使用するか各自で判断してください。
 
参考文献 下線ありのものはクリックで参考先に飛ぶことができます。
 
 
【3】石川伸一監修、和田侑子訳:フードペアリング大全、株式会社グラフィック社、PP68‐69
 
【4】日本食品成分表 2023八訂 いちご 生

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高木駿介

 

管理栄養士
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食品会社の社会人1年目で休日ではサイト運営と食品テクノロジーについて調べています。

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