春キャベツ

キャベツは、アブラナ科に分類される地中海原産の多年生の植物です【1】。
アブラナ科の仲間の食材としてワサビ、だいこん、ブロッコリーなどがあり、辛味を持つ食材が多いのが特徴です。
キャベツには通年にわたって流通している冬系キャベツと栽培時期が限定している春系キャベツがあります。
春系キャベツは近年需要があり、生産量が増加しています。
今回紹介する春系キャベツはいわゆる普通のキャベツとは栽培時期と品種が異なります。
他にも「春キャベツ」、「春玉」、「新キャベツ」などの名前で呼ばれています。

この食材のポイント
・春キャベツは3月~5月中旬頃限定で流通する食材
冬越しが必要なため不繊布で防寒対策し追肥を行う。
詳しくは→1.生産方法と旬の時期 春キャベツはこのようにしてできる
・春キャベツは葉が柔らかくサラダ向きの品種である
詳しくは→2.春キャベツの特徴 風味や食感について
・キャベツはビタミンK、C、葉酸を豊富に含む食材
水溶性ビタミンのビタミンCと葉酸はゆで調理で流出しやすいため
炒め料理か汁も食べるスープや汁物がおすすめ!
その他の食品成分については→3.キャベツの栄養評価
・キャベツは千切りにすると風味が強くなる
加熱調理は長時間加熱すると風味が悪くなる。
詳しくは→4.春キャベツの選び方、調理方法、保存方法
 
春キャベツの栽培から収穫までの流れの例【2】

1.生産方法と旬の時期 春キャベツはこのようにしてできる

春キャベツは秋頃に種まきを行い、春に収穫される食材であるため流通時期が限られている食材です。
旬の時期は3月~5月の中旬頃になります。
10月頃に種まきを行い30~40日かけて苗作りを行います。
キャベツの種はセルトレイで育苗するのが一般的です。
発芽率が高いため1マスに複数の種を撒いて間引く方法を行わなくても1粒ずつ撒いて苗を育てることができます。

定植は苗が本葉が3~4枚ほどで草丈が10㎝ほどになるころに行います。
12月頃になると寒波がキャベツを襲うためトンネル栽培に切り替え不織布を被せて追肥を行い、冬越しの準備を行います。
冬越しを終えてたキャベツは3月頃から収穫可能になります。

2.春キャベツの特徴 風味や食感について

春キャベツは葉が柔らかくて甘味が強いサラダ向きの品種になります。
冬系キャベツに比べて巻きが緩やかで密度が無いため重さが軽いのが特徴です。
キャベツの特徴的な風味と辛味はイソチアシアネート類の化合物によるものです。
イソチアシアネート化合物は細胞に傷がつくほど酵素反応により合成される性質があります。
このような背景からキャベツは千切りという調理方法が定着しました。
キャベツの酵素反応は60℃付近で最大になるため加熱の時は60℃付近の温度帯に通過する速度によって風味の変化が見られます【3】。

3.キャベツの栄養評価

キャベツは日本食品成分表で生の成分値に加え、ゆでや、油炒めなどの100gあたりの成分値が記載されています【3】。
春キャベツの食品成分は記載されていませんので今回は通常のキャベツの生の状態での栄養評価をしていきます。

スマホ版は横スクロールで表全体を確認できます。
豊富に含まれている栄養素は濃い色、一定量含まれている栄養素は薄い色で強調表示しています。

    脂質炭水化物
食材名エネルギー    
kcal
水分       
g
たんぱく質    
g
脂質       
g
飽和脂肪酸    
g
n-3系不飽和脂肪酸
g
n-6系不飽和脂肪酸
g
コレステロール  
mg
炭水化物     
g
食物繊維     
g
キャベツ
結球葉 生
2192.71.30.20.020.010.01(0)5.21.8
キャベツ
結球葉 ゆで
1993.90.90.20.020.010.01(0)4.62.0
・(0)は未測定であるが、文献等により含まれていないと推定されるもの
・Trは未測定であるが、文献等により微量に含まれていると推定されるもの
・キャベツ ゆでの脂肪酸の成分値は類似食品から推計や計算により求めた値、または諸外国の食品成分表の収載値から借用した値、原材料配合割合を基に計算した値。

 無機質
食材名ナトリウム    
mg
カリウム     
mg
カルシウム    
mg
マグネシウム   
mg
リン       
mg
鉄        
mg
亜鉛       
mg
銅        
mg
マンガン     
mg
ヨウ素      
μg
キャベツ
結球葉 生
52004314270.30.20.020.160
キャベツ
結球葉 ゆで
392409200.20.10.020.140
 ビタミン
食材名ビタミン 
A
 
μg
ビタミン 
D
 
μg
ビタミン 
E
 
mg
ビタミン 
K
 
μg
ビタミン 
B1
 
mg
ビタミン 
B2
 
mg
ビタミン 
B6
 
mg
ビタミン 
B12
 
μg
葉酸   

 
μg
ビタミン 
C
 
mg
キャベツ
結球葉 生
4(0)0.1780.040.030.11(0)7841
キャベツ
結球葉 ゆで
5(0)0.1760.020.010.05(0)4817
ビタミンA :レチノール活性当量の値を記載
ビタミンE :α-トコフェロールの値を記載

キャベツはビタミンK、C、葉酸が豊富に含まれる食材です。
ビタミンCと葉酸は水溶性のビタミンであるためゆでた場合の成分値は減少していることがわかります。
加熱料理に使用する場合は炒め料理か調理した汁ごと食べることのできるスープや汁物に使用すると効率よく栄養素を摂取できます。
またビタミンCは熱によって壊れやすいので長時間の加熱には注意しましょう。

キャベツの芯の部分は捨ててしまう場合が多いですが、カルシウム、カリウム、リン、マグネシウムなどのミネラル類が葉の倍以上含まれています【4】。
キャベツの芯は小さく切って加熱調理などに利用すると食べることができます。

4.春キャベツの選び方、調理方法、保存方法

春キャベツの選び方

新鮮なキャベツはハリとツヤがあり鮮やかな緑色をしています。
みずみずしさがあり外葉に変色がないものを選びましょう。
葉の一部や根本の切り口周りが変色していたり腐食していると貯蔵性が著しく落ちてしまうため注意が必要です。

春キャベツの調理方法

下処理

葉キャベツは葉が柔らかいので葉脈の部分以外は1口サイズに切れば生でも美味しく食べることができます。
食感を揃えるために葉脈の部分は別で薄切りにするといいでしょう。
キャベツの風味を活かしより柔らかい食感にしたい場合は千切りがおすすめです。
酸味のあるドレッシングと合わせると辛味が6倍になるとも言われています【3】。
逆に辛味を抑えたい場合は水に2分ほどしたしておくと辛みが軽減され食感もパリッとします。
水は50℃の温水に置き換えることでヒートショックという現象が起こりよりパリッとした食感になるので試してみてください。

加熱料理

春キャベツを加熱する場合は強火で短期間に調理するのが有効です。
特にゆで料理の場合は長時間の加熱は注意が必要です。
加熱時間が長いと熱によって風味成分の硫黄化合物が変化しトリスルフィドとよばれる嫌な臭いになります。

関連レシピ

編集中

春キャベツの保存方法

春キャベツの保存は冷蔵保存がおすすめです。
野菜は収穫後も呼吸し栄養素を消費するため呼吸を制御することで保存性が高まります。
またキャベツの芯は水分や栄養素を吸収するためくりぬいておき湿らせたキッチンペーパーを詰めておくといいでしょう。
ポリ袋にいれて軽く縛って保存しておくことで袋内の空気のバランスが変わりキャベツの呼吸を制御することができます。
適切に保存した場合の保存目安は1~2週間ほどになります。

冷凍保存は水分がでてきやすく生食にはむいてませんが加熱調理には使用することができます。
食べやすいサイズに切ったうえで保存袋にいれて冷凍保存します。
使用する際は解凍せずに冷凍のまま加熱しましょう。
適切に保存した場合の保存目安は2~3ヶ月です。

*1 紹介する保存方法の保存期間はあくまでも目安です。
食材の状態、保存環境によって保存期間は変化します。
使用する際はカビの有無や乾燥状態、冷凍の場合は冷凍焼けしていないかなど食材の状態を見たうえで使用するか各自で判断してください。

参考文献 下線ありのものはクリックで参考先に飛ぶことができます。

【1】植物和名ー学名インデックス YList:Brassica oleracea L. var. capitata L.

【2】秋田県野菜栽培技術指針:農林水産省 PP173-181

【3】香西みどり監訳:マギーキッチンサイエンス -食材から食卓まで、共立出版株式会社、2021、PP311-312

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高木駿介

 

管理栄養士
趣味:料理、映画鑑賞(SFやヒーローもの)
食品会社の社会人1年目で休日ではサイト運営と食品テクノロジーについて調べています。

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