しいたけはキシメジ科に属する中国・日本原産のきのこです。
きのこは植物界にも動物界にも属さない菌界に分類されるカビや酵母の仲間になります。
しいたけの可食部は子実体で傘状の胞子をばらまくための器官になります。
・しいたけは原木栽培と菌床栽培がある
現在は菌床栽培が一般的な栽培方法で施設での栽培が可能であることからしいたけは通年流通している。
詳しくは→1.生産方法と旬の時期 しいたけはこのようにしてできるへ
・しいたけはうまみ成分のグアニル酸を豊富に含む
うま味の相乗効果によりカツオや昆布のうま味成分と相性がいい食材。
詳しくは→2.しいたけの特徴 風味や食感、品種についてへ
・しいたけは食物繊維、ビタミンB2、葉酸などの栄養素を含む
干ししいたけはこれらに加えビタミンDを含む。
詳しくは→3.しいたけの栄養評価へ
・自作の干ししいたけは薄切りにして干すことでカビにくくなる
詳しくは→4.しいたけの選び方、調理方法、保存方法
1.生産方法と旬の時期 しいたけはこのようにしてできる
しいたけは菌床栽培と原木栽培によって生産されます。
菌床栽培は殺菌したおがくずやふすまなどをブレンドしその中にしいたけの種菌を混ぜ込み栽培する方法で原木栽培はクヌギやコナラの丸太に種菌を打ち込む方法です。
原木栽培のほうが手間がかかり、収獲までに時間がかかるため、現在生産されているしいたけの約90%が菌床栽培によるものといわれています。
菌床栽培
菌床栽培は自然栽培型と施設栽培型があります。
自然栽培型は自然の環境で育てるため栽培と収穫の時期が限定されており春に植菌を行い、秋に収穫を行う場合と秋に植菌を行い、春に収穫を行う場合があります。
施設栽培は温度や湿度が管理された状態で栽培されるため通年にわたって流通が可能な栽培方法です。
原木栽培
原木栽培のしいたけは①原木作りから始まり、②植菌 ③本伏せ ④発生操作・ほだ起こし を経て収穫されます。
収獲は春と秋の年2回行われます。
原木栽培は収穫までに時間がかかる栽培型ですが可食部の子実体が発生してからはおよそ6~7年ほど同じ原木から収穫することができます。
原木作り(原木伐採~葉枯らし)
しいたけは死物寄生菌(腐生菌)であるため原木は伐採したあとに死滅させるために葉枯らしという工程を行います。
葉枯らしは伐採したあと原木を放置し、しいたけに適した湿度になるまで乾燥させることをいいます。
葉枯らしを終えた後は栽培の作業を行いやすいサイズに原木を切り分けます。
植菌・仮伏せ
植菌は2月~4月上旬頃に行われます。
植菌は原木に穴を開けて杭状の種菌を打ち込む作業です。
植菌後は4月中旬頃の気温が温かくなるまでは原木を積み置きして上に笠木や遮光ネットをする仮伏せを行います。
仮伏せは原木に菌が定着するのを促す作業で保湿の役割があります。
本伏せ
本伏せはしいたけの菌糸を原木に均一に蔓延させるために行われます。
菌糸の成長には適度な温度(品種による)と湿度(約40%)、通気性が必要であるため、原木同士に隙間ができるような組み方をして本伏せは行われます。
乾燥している地域では原木同士の隙間を小さくして調節をします。
しいたけの菌糸が原木に十分に蔓延されるのにおよそ1年半かかります。
発生操作・ほだ起こし
しいたけは、低温刺激を受けた後、水分を得ることで子実体を発生させる性質があります。
自然界では雨や雷の刺激で子実体が発生します。
しかし、人工的にこの刺激を再現することで確実に子実体を発生させることができます。
このため、本伏せを終えた後、原木を8〜20時間ほど浸水させる浸水操作が行われます。
その後は発生に適した温度(品種による)、湿度(約60%)に場所を移して収穫のしやすいように原木を組みなおす工程のほだ起こしを行います。
収獲
収獲は子実体の傘の開き具合をみて行われます。
乾燥品の場合は食品表示基準によって規格が定義されています【3】。
食材名 | |
---|---|
乾しいたけ | しいたけ菌の子実体を乾燥したもので全形のもの、柄を除去したもの又は柄を除去し、若しくは除去しないでかさを薄切りしたもの。 |
どんこ | 乾しいたけのうち、かさが七分開きにならないうちに採取したしいたけ菌の子実体を使用したもの。 |
こうしん | 乾しいたけのうち、かさが七分開きになってから採取したしいたけ菌の子実体を使用したもの。 |
収獲後は生の場合はそのまま流通されますが、乾燥品の場合は水分含量が10%になるように乾燥させます。
2.しいたけの特徴 風味や食感について
しいたけはうま味がありコリコリとした弾力のある食感で加熱するとジューシーに仕上がります。
食感は傘の開き具合によって変わり、傘の開き具合が七分開き前のどんこは肉厚で弾力のある食感です。
対して傘の開き具合が七分開き後のこうしんは厚さはありませんが傘が開いていることから出汁が取れやすい特徴があります。
しいたけの呈味成分
しいたけはうま味成分のグアニル酸を豊富に含まれる食材です。
うま味成分は異なる種類のうま味成分と組み合わせるとそれぞれのうま味が強化される相乗効果をもたらします。
そのためしいたけはグルタミン酸を豊富に含む昆布やイノシン酸を豊富に含むためのカツオとの相性がいい食材です。
しいたけは乾燥させると生のものより2倍程度うま味成分が増えるので乾燥しいたけのほうがうま味が強くなります。
しいたけの香気成分
しいたけの乾燥品は特有の香気成分を含み、レンチオニンと呼ばれます【4】。
レンチオニンは生の状態ではレンチニン酸という成分で乾燥させたり乾燥品を水で戻す際に酵素反応により生成されます。
またきのこ類全般に含まれ、単体では松茸の香りがする1-オクテン-3-オール(マツタケオール)も含まれています。
3.しいたけの栄養評価
しいたけは日本食品成分表で生やゆで、油いための場合は原木栽培と菌床栽培でそれぞれの100gあたりの成分値が記載されています【5】。
乾燥しいたけは乾、ゆで、甘煮の状態の成分値が記載されています。
乾燥しいたけは水分を取り除いているため100g当たりの栄養価は他の食材に比べて高い数値となっています。
実際の料理では水に戻して使用するため表をみて単純に全ての栄養素が豊富に含まれていると判断することはできません。
乾燥しいたけの戻し率はおよそ400%で戻した状態のしいたけを50g食べた場合は乾燥状態のものをおよそ12g食べたのと同等と考えることができます。
以上のことを考慮した上で今回はしいたけの菌床栽培と原木栽培の生の状態と乾燥しいたけの乾燥状態とゆでた場合の栄養評価をしていきます。
スマホ版は横スクロールで表全体を確認できます。
豊富に含まれている栄養素は濃い色、一定量含まれている栄養素は薄い色で強調表示しています。
脂質 | 炭水化物 | |||||||||
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食材名 | エネルギー kcal | 水分 g | たんぱく質 g | 脂質 g | 飽和脂肪酸 g | n-3系不飽和脂肪酸 g | n-6系不飽和脂肪酸 g | コレステロール mg | 炭水化物 g | 食物繊維 g |
生しいたけ 菌床栽培 生 | 25 | 89.6 | 3.1 | 0.3 | 0.04 | 0 | 0.15 | 0 | 6.4 | 4.9 |
生しいたけ 原木栽培 生 | 34 | 88.3 | 3.1 | 0.4 | 0.04 | 0 | 0.16 | (0) | 7.6 | 5.5 |
乾しいたけ 乾 | 258 | 9.1 | 21.2 | 2.8 | 0.33 | Tr | 1.22 | 0 | 62.5 | 46.7 |
乾しいたけ ゆで | 40 | 86.2 | 3.1 | 0.3 | 0.04 | 0 | 0.13 | – | 9.9 | 6.7 |
・Trは未測定であるが、文献等により微量に含まれていると推定されるもの
・乾しいたけの脂肪酸の成分値は類似食品から推計や計算により求めた値、または諸外国の食品成分表の収載値から借用した値、原材料配合割合を基に計算した値。
無機質 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
食材名 | ナトリウム mg | カリウム mg | カルシウム mg | マグネシウム mg | リン mg | 鉄 mg | 亜鉛 mg | 銅 mg | マンガン mg | ヨウ素 μg |
生しいたけ 菌床栽培 生 | 1 | 290 | 1 | 14 | 87 | 0.4 | 0.9 | 0.10 | 0.21 | 0 |
生しいたけ 原木栽培 生 | 1 | 270 | 2 | 16 | 61 | 0.4 | 0.7 | 0.06 | 0.27 | 0 |
乾しいたけ 乾 | 14 | 2200 | 12 | 100 | 290 | 3.2 | 2.7 | 0.60 | 0.96 | 4 |
乾しいたけ ゆで | 3 | 200 | 4 | 9 | 38 | 0.5 | 0.3 | 0.07 | 0.12 | 0 |
ビタミン | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
食材名 | ビタミン A μg | ビタミン D μg | ビタミン E mg | ビタミン K μg | ビタミン B1 mg | ビタミン B2 mg | ビタミン B6 mg | ビタミン B12 μg | 葉酸 μg | ビタミン C mg |
生しいたけ 菌床栽培 生 | 0 | 0.3 | 0 | 0 | 0.13 | 0.21 | 0.21 | 0 | 49 | 0 |
生しいたけ 原木栽培 生 | (0) | 0.4 | (0) | (0) | 0.13 | 0.22 | 0.19 | (0) | 75 | 0 |
乾しいたけ 乾 | (0) | 17.0 | 0 | 0 | 0.48 | 1.74 | 0.49 | – | 270 | 20 |
乾しいたけ ゆで | (0) | 1.4 | – | – | 0.05 | 0.26 | 0.07 | – | 35 | – |
ビタミンE :α-トコフェロールの値を記載
しいたけは食物繊維、ビタミンB2、葉酸を含む食材です。乾燥しいたけの場合はビタミンDも含まれます。
乾燥しいたけのビタミンDが生の状態よりも多く含まれているのは水分の減少以外にも理由があります。
しいたけは生の状態ではプロビタミンDのエルゴステロールを含みます。
天日干しによる太陽光の紫外線照射により、エルゴステロールがビタミンDに変換されることで、乾燥しいたけにビタミンDが豊富に含まれるようになります。
現在の乾燥しいたけはカビなどの防止のため機械によって素早く熱乾燥させるのが一般的でその場合はビタミンDは増加しません。
ただし熱乾燥した後、天日干しを行った製品もありますので気になる方は手に取った乾燥しいたけの製造工程を調べてみるのも面白いかもしれません。
4.しいたけの選び方、調理方法、保存方法
しいたけの選び方
おいしいしいたけを選ぶポイントは、傘の形が整っており、端に傷がないものを選ぶことです。
生のしいたけは傷みやすいため、傷が少ないものを選ぶと、より美味しく食べられます。
また、しいたけの傘の開き具合によって味や食感が異なるので、用途に合わせて選ぶと良いでしょう。
しいたけの調理方法
下処理
乾燥しいたけの場合は水に戻してから使います。
戻し率が400%であることを考慮に入れて必要量はかります。
流水で軽く汚れを洗い流したあとしいたけが完全に浸かるほどの水を用意し冷蔵庫で6~12時間ほど漬け込みます。
薄いものは6時間ほどで戻りますが、厚みがあるものは長く漬け込みましょう。
戻し汁はうま味を豊富に含むためお吸い物や煮込み料理の水の代わりに使用するとうま味を豊富に含みおいしくなります。
加熱調理
しいたけのうま味を利用して調理することがポイントです。
生の状態は水分を多く含むためバターとしょうゆを傘に置き焼くことでジューシーに仕上げることができます。
乾燥品はうま味が強いのでお吸い物や炊き込みご飯などに利用することができます。
食感を大切にしたい場合は生のものを、料理全体にうま味を加えたい場合は乾燥しいたけを使用しましょう。
関連レシピ
編集中
しいたけの保存方法
生の状態では冷蔵保存が好ましいです。
鮮度が落ちてくると表面にぬめりがでてくるためそうなる前に消費しましょう。
適切に保存した場合の保存目安は1週間です*1。
乾燥品は常温で長期保存が可能です。
市販品の場合は消費期限が設定されているため表示に従って消費しましょう。
生しいたけが使いきれない場合は乾燥させることで保存性が高まります。
家庭で乾燥しいたけを作る場合は薄切りにして天日干ししたほうが素早く乾燥しカビのリスクが低くなります。
食品用の乾燥機がある場合は素早く乾燥させることができて衛生的です。
衛生的に管理するために手指は手洗い・消毒を行い、器具も殺菌しましょう。
しいたけに湿りを感じないほどに乾燥させたら殺菌済みの瓶や保存袋に保存します。
適切に保存した場合の保存目安は3ヶ月ほどです。
食材の状態、保存環境によって保存期間は変化します。
使用する際はカビの有無や乾燥状態、冷凍の場合は冷凍焼けしていないかなど食材の状態を見たうえで使用するか各自で判断してください。
参考文献 下線ありのものはクリックで参考先に飛ぶことができます。
【1】PDF:原木シイタケ栽培の手引 熊本県林業研究・研修センター
【2】PDF:菌床シイタケ栽培技術指針 徳島県立農林水産総合技術支援センター
【3】乾しいたけ品質表示基準(平成12年12月19日農林水産省告示第1633号)の一部改正新旧対照表
【4】加藤保子、中山勉編:食品学Ⅱ 食品の分類と利用法改訂第2版、株式会社南江堂、2016、P94
【5】日本食品成分表 2023八訂
生しいたけ 菌床栽培 生
生しいたけ 原木栽培 生
乾しいたけ 乾
乾しいたけ ゆで
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