パースニップ

パースニップは、セリ科に分類されるヨーロッパ原産の植物です【1】。
にんじんによく似た白色の根菜で、別名にアメリカボウフウ、白ニンジン、砂糖ニンジン、清正ニンジンなど様々な名称で呼ばれることもあります。
葉や茎には毒性あるフラノクマリンという成分が含まれています。
葉や茎の汁がついた状態で皮膚が日光に晒されると皮膚炎を引き起こすため、葉や茎が残っている場合は注意して取り扱いましょう。
料理ではポトフやスープなどの煮込み料理や、ローストやフライなどの油を使った焼き料理にすると、甘くておいしく食べることができます。
日本では生産が少なく、ホテルやレストランなどに卸されることが多く、一般ではインターネット通販以外では入手が難しい食材です。
鹿児島県垂水市では、パースニップを特産品として広めようと取り組みが行われているそうです。

この食材のポイント
・パースニップは発芽率が低く栽培が難しいことから日本の栽培事例が少ない
パースニップは寒い時期で収穫することで甘味が増しておいしくなる
詳しくは→1.生産方法と流通時期 パースニップはこのようにしてできる
・パースニップはにんじんよりも甘くて風味は果物のような甘い香りとハーブの爽やな香り
詳しくは→2.パースニップの風味と食感 見つからない場合の代替食品は?
・パースニップは他の根菜類よりもビタミンやミネラルが豊富に含まれている
詳しくは→3.パースニップの栄養評価
・パースニップは煮込みや焼きなど加熱調理して食べるのがおすすめ!
詳しい食べ方は→4.パースニップの選び方、調理方法、保存方法

パースニップの栽培から収穫までの流れの例

1.生産方法と流通時期 パースニップはこのようにしてできる

パースニップは4ヶ月ほどで収穫することができます。
種まきの時期は春撒きと秋撒きがありますが一般的には秋撒きが有効なようです。
パースニップは寒さに晒されると凍結防止の防御反応から糖度が増加する性質をもつため8月~9月頃に種まきを行い冬に入るころに収穫できるようにします。

パースニップの種はにんじんと同様に発芽しにくく、にんじんの発芽率(70~80%)よりもさらに低くパースニップの発芽率は60~65%ほどとなっています。
1年以上たった種は発芽率がさらに低くなるため種は新しいものを用います。
畑には少し多めに種を撒くため発芽し密集する場合は間引きを行います。
間引き後は必要に応じて土寄せや追肥を行います。
収穫時期を過ぎると根が木質化し食品としての価値が下がるので状態をみて収穫をおこないます。

2.パースニップの風味と食感 見つからない場合の代替食品は?

パースニップはニンジンに似ていますが加熱調理でにんじん以上の甘味となります。
イギリスでは砂糖が手に入る前はケーキやジャムの材料として使われていました。
硬さは生の状態だとにんじんよりもゴボウに近くそのままだと繊維質で食べにくいですが、加熱調理をすると根菜類のじゃがいもやにんじんよりもやわらかくなります。
風味はにんじんの香りとは異なり、果実のような甘さとハーブの爽やかさが合わさったような風味です。
これらの特性から、他の食材でパースニップを代替するのは難しいです。最も類似した食材はやはりにんじんでしょう。

3.パースニップの栄養評価

パースニップは他の根菜類よりも食物繊維、ミネラル類、ビタミンCなどが豊富に含まれています。
にんじんと比較すると一部の栄養素を除き多くの栄養素はパースニップのほうが多く含まれます【2】。
ただし、パースニップにはにんじんと違いβ-カロテンを含まず、ビタミンAに換算した値であるレチノール活性当量(ビタミンA RAE)の値は0μgとなっています。

パースニップ:エネルギー75kcal, 炭水化物18.0g, 食物繊維4.9g, カリウム375mg, 鉄0.59㎎, 亜鉛0.59mg,ビタミンA 0μg, ビタミンK 22.5μg, 葉酸 67μg, ビタミンC 17.0mg にんじん:エネルギー48kcal, 炭水化物10.3g, 食物繊維3.1g, カリウム280mg, 鉄0.15㎎, 亜鉛0.24mg,ビタミンA 835μg, ビタミンK 13.2μg, 葉酸 37μg, ビタミンC 5.9mg

この表は米国農務省 Food Data Central の情報を参考に著者が作成しました。数値は食材100g当たりの栄養価になります。

4.パースニップの選び方、調理方法、保存方法

パースニップの選び方

パースニップは時間が経つにつれて褐変していきます。
新鮮なパースニップを選ぶには、傷が少なく、色が淡いクリーム色のものを選ぶことが重要です。
また、パースニップ特有の豊かな風味が感じられるものを選ぶと、料理により一層の深みが加わります。

パースニップの調理方法

パースニップは基本的に加熱して食べる食材です。生の状態で食べるのはおすすめしません。
褐変しやすいため包丁で切った後、時間がかかる場合は水に漬けておくと褐変を防止できます。
煮込み料理の具材にする場合は少し大きめの乱切りにすると煮崩れも少なく美味しく食べることができます。日本では珍しい食材なので単品でパースニップの甘味を活かした料理がおすすめです。

加熱調理

パースニップのポタージュ

  1. 溶かしたバター(50g)、パースニップ(200g)、水(30g)を圧力鍋で20分ほど加熱する。
    重曹(1g)を加えると軟らかくなる。
  2. 加熱が終わったらミキサーにかけ鍋に戻す。
  3. 牛乳を加えて好みの温度に温めて食塩で味を調整する。

パースニップのロースト
イギリスではパースニップのローストがクリスマスのディナーの定番とされています。

  1. パースニップをスティック状に切る。
  2. パースニップに串がスっと入るくらいになるまで煮込む。
  3. 水気を切り、フライパンに並べて油をかけて加熱する。
  4. 適度に焼き色が付いたら食塩を加えて味を調える

食塩はパースニップの甘味を強調する程度に加えるのがおすすめです。

パースニップのチップス

  1. パースニップを薄切りにする。オーブンを180℃で予熱する。
  2. パースニップに火が通るまで煮込む。
  3. 水気を切り、オーブンの天板に並べて油をかけて180℃、10分ほど加熱する。

乾燥してパリパリになったら加熱をやめる。

パースニップのグラッセ

  1. パースニップ(200g)を皮を剥いて1cm幅の輪切りにする。
    面取りし形を整えると完成時きれいに仕上がります。
  2. 鍋にパースニップと水(150g)、バター(10g)、砂糖(小さじ1)、塩(適量)を入れて中火で熱し、沸騰したら蓋をして弱火で10分程煮る。
    にんじんを串でさして軟らかくなるのが目安です。
  3. 蓋を外して中火で熱して照りがでるまで煮詰める。

保存方法

パースニップは切り口が褐変しやすいためできる限り使い切るのがおすすめです。
保存する場合はキッチンペーパーで包み保存袋に入れて冷蔵庫で保存することで乾燥を防ぎ、比較的長持ちします。

しばらく使わない場合は調理目的に合わせてあらかじめ切っておき保存袋で冷凍保存することで長期間保存することができます。
使用するときは解凍せずにそのまま使うことで比較的に味の劣化は少ないです。
冷凍したものは水分がでていきやすいため煮込み料理での使用がおすすめです。

参考文献 下線ありのものはクリックで参考先に飛ぶことができます。
【1】植物和名ー学名インデックス YList:Pastinaca sativa L

【2】米国農務省 Food Data Central

パースニップ
USDA Food Data Central:Parsnips, raw

にんじん
USDA Food Data Central:Carrot, raw

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高木駿介

 

管理栄養士
趣味:料理、映画鑑賞(SFやヒーローもの)
食品会社の社会人1年目で休日ではサイト運営と食品テクノロジーについて調べています。

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