4STEPで覚えるオリジナルレシピの考え方 タンドリー風チキンを作りながら紹介するよ

料理のオリジナルレシピはどのように開発するといいのか?

私は、献立作成や商品開発などの試作をする時にいつも考えていることがあります。
それは「効率よく試作を進めるためにはどうすればいいのか」ということ
頭の中で考えてきたことを言語化し文章でまとめることで自分のレシピ開発力に磨きをかけたいなと思い、
今回の記事を書いています。

レシピ作成までの手順を紹介するのに具体的な例が無ければうまく伝えるのは難しいかも..
ということで一品料理のレシピを考えることにしました。
前回の記事ではスパイスについて基本を学び、レシピ通りですがスパイス料理を作りました。
なのでスパイスの勉強の応用もかねて自家製スパイスのタンドリー風チキンを作っていきたいと思います。

この記事は以下の人におすすめ!
オリジナルレシピをイチから考える方法を知りたい人
・スパイスを使いこなせるようになりたい人

数多くあるスパイス料理の中でタンドリーチキンを選んだのはスパイス料理を思い浮かべてカレーの次に頭の中に現れたからです(笑)
そんな単純な理由ですが、作るからにはおいしいタンドリー風チキンを作っていきます!

レシピ作成の手順

レシピ作成は次のような流れで作業すると効率良く進めることができます。

STEP1 事前調査

STEP2 レシピ作成

STEP3 試作&評価

STEP4 改善(STEP1→2→3と繰り返す)

評価後は改善に必要な情報を再調査し、レシピの変更を行います。
レシピ作成の流れこのように改善を繰り返すことでレシピは良いものとなっていきます。

STEP1事前調査 作りたい料理の基本の味を知る

まず最初に作ろうとしている料理がどういうものなのか、この料理をどのような味に仕上げたいのかを知る必要があります。
あなたはタンドリーチキンと聞いてどのようなイメージが浮かぶでしょうか?
私の場合、何も調べていない状態だとカレー風味のスパイスがきいたチキンを思い浮かべます。
では実際にタンドリーチキンについて調べてみましょう。

タンドリーチキン【tandoori chicken】
インド料理の一つ。ヨーグルトや種々の香辛料に漬け込んだ鶏肉をに刺して、タンドールという壺(つぼ)形の土の(かま)で焼いたもの。

出典 講談社和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典について

おおよそイメージした通りな気がしますがいくつか異なる点があります。
材料にヨーグルトが使われている、そして調理器具はフライパンではなく、タンドールという釜で焼くという点がイメージと大きく違いました。
今回のように食べる側のイメージだけでなく作り手のイメージができていないと実は全く別の料理を作っていた…なんてことがあったりするのでレシピを発信する場合は料理の定義は調べておくといいかもしれません。ちなみに今回作るタンドリーチキンのことを「タンドリー風」と書いたのは、お家にタンドールが無いのでフライパンで代用したからです。

皆さんのお家にはタンドールはありますか?(あるわけねーだろ!)

タンドールの画像

タンドール 左:ナンを焼いている様子 右:タンドリーチキンを焼いている様子

次にどのような味に仕上げたいかですが、これば実際に食べるしか方法はありません。

本格的な味を目指すならレストランに行ってプロの味を知るのがいいですし、家庭の味のような味にしたいのならば○○の素みたいな製品を買って作ってみるのもいいでしょう。
どのような味にしたいのかイメージが決まらなければとにかくいろいろな方法で味を知るしかないです。
レシピを作る上でどのような味にしたいのか鮮明なイメージができなければ次のステップのレシピ作成や試作が上手くいかず、無駄な労力やお金をかけてしまうので、納得がいくまで味を知ることが大切です。

今回はタンドリーチキンを売りにしているインド料理のお店に食べに行くこととスーパーで売っているタンドリーチキンの素を使って実際に作ってみるという方法で味の調査をしました。
インド料理のお店では一番豪華なタンドリーチキン(鶏)・タンドリーシュリンプ(エビ)・フィッシュティッカ(魚)のセットを注文。

タンドリーチキン・タンドリーシュリンプ・フィッシュティッカ

左:タンドリーチキン 右上:タンドリーシュリンプ 右下:フィッシュティッカ

タンドリーチキン&シュリンプはともに同じ味付けで思ったほどカレー感はなく、複数のスパイスで香り付けされた塩加減はやや控えめな味付けでした。
フィッシュティッカはカレー粉に近い風味がして自分が最初にイメージしていたタンドリーチキンの香りに近いなと思いました。

続けてS&Bタンドリーチキンの素を使って試作。これは鶏肉にまぶして焼くだけでタンドリーチキンができるというものです。

味はやっぱりお店のタンドリーチキンにと同様に思ったほどのカレー感はなくスパイスが入っていることがわかる味付けでした。
おそらくタンドリーチキンのスタンダードな味付けはこのような味であることが考えられます。
インド料理=カレー味のイメージがありますが、日本人が思い浮かべるカレー味はどちらかといえばイギリス発祥の味に近いと思うので、
タンドリーチキンの味付けはインド発祥の味に近いのかなぁと思ったりしました(真相はわかりませんが…)。

STEP2レシピ作成 いくつかのレシピを参考に基本のレシピを考える

タンドリーチキンについて理解が深まったところで試作1回目となる基本のレシピを作っていきます。
タンドリーチキンのレシピは大きく分けて2種類のタイプが見られました。

タンドリーチキンの配合パターン2種
1つはスパイスの構成がパプリカパウダー+カレー粉のレシピです。
Googleで「タンドリーチキン レシピ」というキーワードで検索してみるとわかりますが、ほとんどのレシピはパプリカパウダー+カレー粉またはガラムマサラというシンプルな配合になっています。
スパイスを炒ったり粉末状にする手間を省くことができるためとても作りやすく安定したおいしさが保証されているのがメリットかと思います。

もう一つはいくつかのスパイスを買いそろえて自分で作ったミックススパイスを使ったレシピです。
このタイプのレシピを見つけたい場合はGoogleで「タンドリーチキン スパイス レシピ」と検索するといくつかでできます。
使われるスパイスはクミンやコリアンダーなどカレー粉と共通するスパイスが使用されますが、
市販のカレー粉は数十種類に及ぶ多数のスパイスを組み合わせて作られるのに対して自分で作るスパイスは
4~8種類のスパイスを使うレシピが多い傾向にあります。
自分で作るミックススパイスはカレー粉のようにどんな食材にも合うスパイスにするには難しいですが、
鶏料理に合うミックススパイス、魚料理に合うミックススパイスといったように食材にあった組み合わせを表現できることがメリットになるかと思います。

私は多少手間でも食材に合わせていろいろな味付けが表現できた方が食生活を楽しむことができると考える人なので、後者のオリジナルスパイスを考えて作るレシピを採用していきたいと思います。

材料の選定

カレー粉を使用しないスパイスを使ったレシピをいくつか集めて使用する材料を決めていきます。
まずは主役の鶏肉これはジューシーなモモ肉を使います。
次に鶏肉を漬け込むタレに相当するタンドリーマサラ(以下マサラ)について決めていきます。

マサラのレシピの多くはヨーグルト、ケチャップ、スパイスにみじん切りにした生姜とにんにくを混ぜ合わせたものが主流でしたのでこちらの方法を採用します。
食材の使用量はそれぞれ根拠をもって設定していくとあとで調節する際に考察がしやすくなります。

今回のタンドリーチキンで重要になってくる項目は①鶏肉に対するタレの比率や②おいしさの決め手となる味・辛さ・香りに関わる食材の適正量になります。

項目 ①設定に関する項目、②適性量、③適性量とする根拠 料理のバランス①鶏肉に対するタレの比率②鶏肉重量の20%③10種類のレシピを参考に算出 辛さ①チリペッパーの使用量②タレ重量の0.5%③辛いのは苦手なので参考レシピ 味①塩コショウの使用量②総重量の1.3%③ほどよく感じる標準的な塩分濃度※1 香り①スパイスの使用量②総重量の1.5%③10種類のレシピを参考に算出
※1塩分濃度は人の体液の浸透圧(0.85%)に起因する

適性量とレシピの使用量を参考に材料を決めた結果がこちらです。

材料

鶏もも肉 500g
にんにく 10g (12%)
しょうが 10g (12%)
ケチャップ 18g (20%)
オリジナルスパイス 7g   (9%)
ヨーグルト 45g (47%)
塩こしょう 適量(総重量の1.3%を目安に)

鶏もも肉より下の材料はタレの材料です。タレに対する原料の割合を(%)で表示しています

使用するスパイスの選定ですが10種類のレシピを参考に各スパイスの採用頻度と平均的な使用量を算出し、その数値をもとに選定しました。

10種類スパイスの配合まとめ

10種類のレシピの配合から各スパイスの平均使用量とそのスパイスが採用される頻度を算出した結果

詳しい計算方法やスパイスを組み合わせについて理解を深めたい方はこちらの記事の課題3の部分を読むと参考になるかと思いますのでよかったら見てください。

選定した結果がこちら↓

残りのマスを小さじ1/2をターメリック、小さじ1をチリパウダーで埋める

パプリカ 小さじ2
コリアンダー 小さじ2
クミン 小さじ2
チリペッパー 小さじ1
ターメリック 小さじ1/2
黒こしょう 小さじ1/2

上の図のようにスパイスを4×4のマスにパズルのように埋めるようにして配合を考えるとイメージがしやすく有効です。
これは水野仁助さん著書の「スパイスカレーを作る自分好みのカレーが作れるメソッド&テクニック」に書かれていたスパイスメソッドを一部参考にしたものです。スパイスメソッドは上の図のようにスパイスを小さじ表記にしていましたが、匙表記だと原形のままのホールスパイスは正確に測れないので割合表記のほうが作りたい量を計算しやすいメリットもあり、有効なのではと思いました。

試作1回目では小さじ表記を重量に直して試作を進めました。
1回目以降は割合表記でスパイスを組んでいます(少しわかりにくくなってごめんね💦)。

スパイスメソッドver2

ちなみに今回の配合をミックススパイス全体に対する割合に変換するとこのようになります。(小さじ1/2が6.25%に変換されてとても分かりにくい… )

オリジナルスパイスの材料

パプリカ 25%
コリアンダー 25%
クミン 25%
チリペッパー 12.5%
ターメリック 6.25%
黒こしょう 6.25%

オリジナルスパイスは粉砕してフライパンかオーブンで炒るので必要量の7gぴったりで作るよりも少し多めに作った方がいいと思います。12gくらい?

以上で試作1回目で使用する材料はすべて揃いました。

作り方を決める

材料の選定と同様にいくつかのレシピと比較しながら作り方を考えていきます。
レシピの作り方を見る時は書かれた調理法を行う意図を考えることが重要です。
「なぜこの調理をするといいのか?」、「この調理手順は本当に必要なのか?」など疑問を感じる癖をつけることで作るレシピがより洗練され良いものになっていきます。

・器具と設備

作り方

事前準備 ヨーグルトの水切り

①キッチンペーパーを敷いたザルにヨーグルトを入れ、ザルの下にボウルを置き水切りをする。
②ボウルをラップでかぶせて冷蔵庫で放置する(最低6時間くらい)。

タンドリーチキンの手順
  1. にんにく、しょうがをみじん切りにする。
  2. 調味料と1.を混ぜ合わせてたれを作る。
  3. 鶏もも肉を一口大(5㎝くらい)に切って塩コショウで下味をつける。
  4. ジップロックにたれと鶏肉を加え、全体になじむまで揉みこむ。
  5. 冷蔵庫に1時間放置する。
  6. フライパンに油を敷き5.を加熱する。火は最初中火で表面に焼き色を付けて弱火で蓋をして中まで火が通るように加熱する。

以上が試作1回目の流れになります。あとは作る→食べる→改善を繰り返していきます。
準備ができたところで試作していきたいと思います。

STEP3試作&評価 実際に料理を作り、おいしさを評価する

実際に試作をしてみておいしく作るためのポイントなどを考えていきます。
手順に無理があったり、誤解を招きそうな表現があれば後で修正するようにメモしておくとよいでしょう。
完成した料理は食べてみておいしいorまずいと簡単な評価を下すのではなく具体的な言葉で言語化して評価することを意識しましょう。

試作した結果がこちら

試作1回目のタンドリーチキン

先ほどの指針に沿って試作一回目を私の場合このように評価します。

・塩味とスパイスの香りのバランスは良くクセは少ないがもう少し刺激のあるといいと感じた。
・色はインド料理のお店で食べたタンドリーチキンのような赤さにはならなかった。
・鶏肉にタレを漬けて作ったため、味が染みていたがタレの水分で外側をパリッと焼けなかった。

1回目の試作の評価を終えたら2回目以降の試作はどのようにしていくか考えていきましょう。

STEP4改善 評価をもとにレシピの配合の変更、改善していく

今回の評価で改善の必要があるのは①スパイスの配合 ②料理の色 ③食感の改善といったところでしょうか?

スパイスの配合は前回の記事で書いたウインダルースパイスがとてもおいしかったので、ウインダルースパイスで使っていたカルダモン、クローブを追加して配合を考え直していきます。

タンドリーチキンの色は調べてみるとお店では色素を使用して赤くしていることがわかりました。
今回は食材由来の赤色にしたいのでケチャップの割合を増やして無理のないように配合を変更していきます。

最後に食感の改善はこのままでも問題はないと思いますが、外側と内側で食感に変化がある方がよりおいしくなると思うので、焼く直前に片栗粉をまぶしてサクサクした食感を追加しようと考えました。
以上を意識してレシピの材料と作り方の変更をしていきます。

試作2回目の材料

鶏もも肉 500g
にんにく 8g  (9%)
しょうが 8g  (9%)
ケチャップ 35g (40%)
オリジナルスパイス 9g   ( 8%)
ヨーグルト 30g  (33%)
塩コショウ 適量 (片栗粉以外の総重量の1.3%を目安に)
片栗粉(必要量) 45g (鶏肉全体がなじむくらい)

鶏肉より下の材料はタレの材料です。タレに対する原料の割合を(%)で表示しています
タレに含まれるケチャップの割合を20%→40%に変更しました。
タレの重量は1回目と同じにしているので相対的に他の原料は減らしています。

続いてオリジナルスパイスの配合です。

オリジナルスパイスの材料

図解 試作2回目のスパイスの配合

コリアンダー 35%
パプリカ 20%
クミン 20%
チリペッパー 5%
ターメリック 5%
クローブ 5%
カルダモン 5%
黒こしょう 5%

ウィンダルースパイスの原料となっていたクローブとカルダモンを追加しました。

スパイスを増やすことで全体のバランスをとるのが難しくなる傾向にありますが、コリアンダーの割合を増やすことで香りのバランスが良くなりました。

当初はパプリカの割合を増やしてチキンの色を赤色っぽく調節する予定でしたがこれ以上増やすとどうしてもパプリカの味が前に出てきてしまったのでケチャップのみて色を赤くしました。

作り方の変更点

太字が変更点になります。タレに漬けた後、片栗粉をまぶす工程を追加しました。

  1. にんにく、しょうがをみじん切りにする。
  2. 調味料と1.を混ぜ合わせてたれを作る。
  3. 鶏もも肉を一口大(5㎝くらい)に切って塩コショウで下味をつける。
  4. ジップロックにたれと鶏肉を加え、全体になじむまで揉みこむ。
  5. 冷蔵庫に1時間放置する。
  6. 鶏肉とタレを混ぜ入れて冷蔵庫で1時間放置した後、鶏肉に片栗粉をまぶす。
  7. フライパンに油を敷き5.を加熱する。火は最初中火で表面に焼き色を付けて弱火で蓋をして中まで火が通るように加熱する。

完成したタンドリーチキンがこちら↓

試作2回目タンドリーチキン

見た目は完全にから揚げですが(揚げてないよ!)味はスパイシーでしっかりとタンドリーチキンの要素があります。
完成率90%といったところでしょうか?
残りの10%は味の調節です。
最後に入っているかわからない程度の味の素を少々、塩分濃度の1/10~1/20くらいを加えて最後の試作を行いました。
普段はうま味調味料はあまり使いませんが、ほんの少し加えるだけで味にまとまりができる感じがしました。
ただし、あまり多く入れてしまうと味の素の味になって単調な味になってしまうので注意です。

試作3回目タンドリー風チキン

完全にから揚げな試作3回目タンドリー風チキン

いかがだったでしょうか、今回はスパイスの配合から考えるタンドリー風チキンのレシピを考えていきました。
レシピを作る時は①料理について調べる→②レシピを考える→③料理しておいしさの評価をする→④改善する
この流れを意識するとうまくいきます!

レシピ作成の流れ
スパイスの配合をイチから考えてみたい、レシピを考えてみたいという人のヒントになれば嬉しいです。

 

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高木駿介

 

管理栄養士
趣味:料理、映画鑑賞(SFやヒーローもの)
食品会社の社会人1年目で休日ではサイト運営と食品テクノロジーについて調べています。

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