たまねぎ

たまねぎは、ヒガンバナ科に分類される中央アジア原産の植物です【1】。
同じヒガンバナ科の食材としてネギ、ポロネギ、にんにくなどがありどれも風味に優れた食材です。
たまねぎの食用部は鱗茎(りんけい)と呼ばれる地下部分にある茎の一種です。
鱗茎は貯蔵器官の役割を果たし成長に必要なエネルギーが蓄えられています。

たまねぎには収穫時期によって貯蔵たまねぎと新たまねぎに分けられます。
貯蔵たまねぎは成熟した状態で収穫したもので貯蔵性に優れ風味が強いですが生の状態では辛みが強いので主に加熱して食べられます。
外皮が茶色で一般的にたまねぎの名称で販売しているものは貯蔵たまねぎにあたります。
新たまねぎは成熟前の早い段階で収穫したもので水分量が多く貯蔵たまねぎよりもマイルドで生でも食べることができます。

この記事では主に貯蔵たまねぎについて紹介します。

この食材のポイント
・野菜は地域ごとに生産時期をずらし安定供給できるようにしている
たまねぎはこのことに加え、貯蔵性の高さから年間を通じて供給が可能な野菜の1つ。
詳しくは→1.生産方法と旬の時期 たまねぎはこのようにしてできる
・たまねぎは生の状態と加熱調理では風味が大きく変化する
風味の正体は硫黄を含む化合物で物理的刺激や加熱調理で構造が大きく変化する。
詳しくは→2.たまねぎの風味 生と加熱 調理の違いによる風味の変化
・たまねぎに含まれる成分は様々な生理作用があることが示唆されている。
詳しくは→3.たまねぎの栄養評価
・たまねぎは生ではサラダに、加熱調理では甘味を引き出してスープやカレーなどの料理におすすめ!
食材の選び方や調理方法は→4.たまねぎの選び方、調理方法、保存方法
たまねぎの栽培から収穫までの流れの例【2】

1.生産方法と旬の時期 たまねぎはこのようにしてできる

たまねぎの種撒きの時期は秋撒き(8月下旬~9月頃)と春撒き(3月下旬~4月頃)があり、春撒きは北海道のような寒冷地で行われます。
以降は秋撒きの貯蔵たまねぎの収穫までの流れについて紹介します。
越冬前に十分に根を伸ばす必要があるので10月上旬に畑に定植を行います。
越冬後は収穫のおよそ1ヶ月前に追肥を行い、たまねぎの鱗茎(食用部)の肥大を促します。
収穫時期は6月下旬~7月中旬頃になります。
収穫後はたまねぎを吊り下げた状態で乾燥させます。
乾燥させることで外皮が着色し、貯蔵性が高まります。

貯蔵たまねぎは産地によって収穫時期をずらすことができるため年間を通して品質が安定している食材です。新たまねぎの旬の時期は3~5月頃です。
ちなみに一番早く新たまねぎを出荷できる都道府県は静岡県で1月頃には出荷されます。

たまねぎのカット処理および熱処理によって生成される含硫化合物【3】

2.たまねぎの風味 生と加熱 調理の違いによる風味の変化

たまねぎの主要な風味は、硫黄化合物が関係しています。
生の状態では、切る、潰すなど損傷を加えると、たまねぎの細胞内に含まれる酵素が反応して刺激性の強い風味を持つ硫黄化合物が生成されます。
生のたまねぎを切るときに涙を誘発するのも、この硫黄化合物が遊離して目に刺激を与えるためです。
催涙性を抑えるためには冷蔵庫に1時間ほど入れて冷やしてから切る方法が効果的です。
冷やすことで酵素の働きを遅くし、催涙性の硫黄化合物を空気中に飛散するのを抑えます。

一方、たまねぎを加熱すると、硫黄化合物が変化し風味も大きく変化します。
風味の変化は調理法や温度によって異なり、例えば油脂を使って高温で加熱すると揮発性成分が多く発生し、より強い風味になります。
たまねぎを炒め続けると飴色になるのはメイラード反応と呼ばれるもので、たまねぎに含まれる糖とアミノ酸が反応してキャラメルのような風味となります。

3.たまねぎの栄養評価

たまねぎの栄養成分は他の野菜類と比べて食物繊維やビタミン、ミネラルが特別多く含まれるわけではありません。
しかし、保存性の良さや食べやすさから食材として広く利用され、食物繊維やカリウムの供給源として有効な食材です。

また、たまねぎに含まれる成分には生理活性として抗血栓作用と血圧上昇抑制作用が生体外研究により報告されています。
24名の軽度高血圧患者を対象としたクロスオーバー比較対照試験の結果では、タマネギをオリーブオイルに浸して得た液を1週間摂取したところ、最大血圧が低下し、血小板や赤血球の凝集などの検査値の改善が見られたとの報告があります【4】。

抗血栓作用

抗血栓作用は、血液凝固を防ぐ作用のことです。
たまねぎが血液をサラサラにするという言葉はこの作用に由来します。
血液凝固は正常な場合は体内の出血を止め、傷口の修復を助けるために重要ですが、異常な血液凝固は血栓形成を引き起こし、血管の閉塞や血流の阻害などを引き起こす可能性があります。
たまねぎに含まれる硫黄化合物の一部(セパエン類)は血栓形成の主要な原因である血小板凝集の阻害作用を示すと推定されています【5】【6】。

たまねぎ中のケルセチンとその配糖体【3】

血圧上昇抑制作用

タマネギに含まれるケルセチンとその配糖体は血圧上昇抑制作用があるといわれています。
ケルセチンは血圧をコントロールする機構であるレニン‐アンギオテンシン系のアンジオテンシン変換酵素(ACE)の活性を阻害することが報告されています。
ACE阻害により、血管の収縮が抑制され、血圧の上昇が抑制されます。

血圧調節機構レニン・アンギオテンシン系【3】
注意
これらの研究報告はタマネギの摂取が体内に有益な影響を与える可能性があることを示唆していますが、習慣的な食品としてたまねぎを摂取する場合の効果を直接保証するものではありません。
実際の食事に近い形態でのたまねぎの摂取と体への影響に関する研究は少なく研究方法にもバラツキがあるため具体的結論を出すにはさらなる研究が必要です(2024年時点)。
健康効果を期待する際には、医療専門家の意見や摂取方法に関する適切な情報を確認することが重要です。

4.たまねぎの選び方、調理方法、保存方法

たまねぎの選び方

たまねぎは中身が腐る可能性があるため、新鮮なものを選ぶのは難しいですが、次のポイントを押さえることで、新鮮なものを選びやすくできます。

外観:黒い斑点が少なく、表面につやがあるもの
触感:適度な硬さがあり、やわらかすぎないもの

たまねぎの調理方法

たまねぎは生では薄切りにしサラダに入れることで適度な辛さがアクセントになりサラダ全体の風味が良くなります。
加熱調理ではたまねぎの甘さを活かして調理することが有効です。

下処理・調理方法

外皮を剥き芯が残るようにして半分にします。
サラダ・生食用は繊維を断つ方向に1㎜以下の薄切りにします。
加熱調理の場合は繊維に沿って切ります。
煮込み料理の場合は大きめのくし切りにすることで形が残りやすくなります。

炒め物用

芯をとり1cm~1.5㎝の幅で繊維に沿って切ります。

みじん切り

芯を切り離さないようにしてまな板に垂直方向に切れ込みをいくつか入れます。
水平方向にもいくつか切れ込みを入れて繊維を断つ方向に包丁を切り進めます。
さらに細かくしたい場合は刃先を支点にして包丁の柄を上下に動かしてたまねぎを切ります。

加熱調理

たまねぎの甘さを引き出すためには加熱調理で水分を適度に飛ばし飴色になるまで炒める方法が有効です。
飴色玉ねぎはカレーのチャツネなどの材料として使うとコクのあるカレーになります。
たまねぎが透明になる段階の加熱ではわずかに辛味と甘さが両立した状態で野菜炒めなどにちょうどいい火加減です。

煮込み料理のたまねぎはそのまま入れるとマイルドで他の食材と調和のとれた味になりますが、炒めて適度に焦げ色を付けて煮込むことでスープの色が濃くなり、香ばしい風味の料理となります。

関連レシピ

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たまねぎの保存方法

冷暗所で常温保存が一般的ですが夏場の気温が高い場合は冷蔵庫での保管がおすすめです。
また、冷蔵庫で保存することでたまねぎを切る時に目が沁みにくくなります。
保存目安は常温で約2週間、冷蔵庫で約1ヶ月です*1。

長期保存したい場合は料理に使う形で切りジップロックで冷凍保存する方法が有効です。
使用するときは解凍せず煮込み料理に直接入れましょう。
冷凍により細胞が壊れているため水分が出やすく焼き色を付ける調理には向いていません。
保存目安は1ヶ月です。

*1 紹介する保存方法の保存期間はあくまでも目安です。
食材の状態、保存環境によって保存期間は変化します。
使用する際はカビの有無や乾燥具合、冷凍の場合は冷凍焼けしていないかなど食材の状態を見たうえで使用するか各自で判断してください。

参考文献 下線ありのものはクリックで参考先に飛ぶことができます。
【1】植物和名ー学名インデックス YList:Allium cepa L.


【2】秋田県野菜栽培技術指針:農林水産省 PP253-255


【3】中谷延二監修:スパイス・ハーブの機能と最新応用技術、株式会社シーエムシー出版、2017、PP141-146

 

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【4】B Mayerら:Effects of an onion-olive oil maceration product containing essential ingredients of the Mediterranean diet on blood pressure and blood fluidityタマネギの摂取と代謝パラメータ:ランダム化比較試験の系統的レビューとメタアナリシス
Najmeh Hejaziら:Onion supplementation and health metabolic parameters: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials

【5】Y.Morimitsu and S. Kawakishi、 Phytochem.、 29、 3435 (1990)

【6】川岸舜明(岩井・中谷編) 香辛料成分の食品機能、光生館、第6章、P193(1989)

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高木駿介

 

管理栄養士
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食品会社の社会人1年目で休日ではサイト運営と食品テクノロジーについて調べています。

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