こんにちはCooking Lab運営の高木です。
今回は『モダニストキュイジーヌ』を実践する企画の第1回目です。
第1回目のテーマは料理の土台を作るための基礎となる“ストック”について紹介します。
ストックとは肉や野菜からうまみを抽出した西洋料理に使われる出汁のことです。
フランス語ではブイヨンやフォンなど呼ばれ方をしており、スープやフランス料理のソースなどに欠かせない材料となっています。
今回はこんがり炒めた豚ひき肉から抽出したブラウンポークストックを作りました。
ストックを抽出するために知っておきたいポイントである
①食材のうまみを引き出すためのポイント
②本来は作るには半日かかるストックの仕込みを時間短縮するためのテクニック
についての2点を学ぶことができたので共有していきたいと思います。
後半では作ったことでわかったことやより良くするための課題について紹介してますので合わせてご覧ください!
まずは、ストックの作り方の流れを紹介したうえで2点のポイントについて実践を踏まえて更に詳しく説明していきたいと思います。
この記事は以下の人におすすめ!
・ストックを仕込むときに理解すべきことが知りたい人
・ちょっと本格的な洋食を作ってみたい人
ブラウンポークストックの概要 器具と食材の準備から作り方の流れまで
最初にブラウンポークストックを作る際に用意した器具・食材と作り方の流れを紹介します。
この作り方は『モダニストキュイジーヌ アットホーム』のP84 ブラウンポークストックのレシピの材料と大まかな手順を図解や表現方法を変えて引用させていただいています。
本記事は、ストック作成におけるテクニックを実践し、そこから得られた疑問や課題を紹介することを目的としているため、食材の分量や詳しい手順などは伏せさせて頂きます。
再現して作ってみたい方は『モダニストキュイジーヌ アットホーム』を購入してください(おススメです)。
使用器具・設備
・オーブンは家にないため今回はグリルで代用しました。
・濾し器は固形物とストックが分離できるもの、今回は65メッシュのふるい器を使用しました。
シノア(円錐上の濾し器)を使ったり、ザルにキッチンペーパーを敷いて濾す方法があります。
材料・作り方
材料 | 作り方 |
豚ひき肉 | ① オーブンを190℃に予熱し、スペアリブに油を絡めて加熱する。
② にんじん・たまねぎ・ポロネギを薄切りにする。 ③ 圧力鍋に油をひき、ひき肉を濃い茶色になるまで炒める。目安:中火・約8分 ④ 圧力鍋に材料をすべて加え、中火で加熱する。 ⑤ 圧力がかかったら※弱火・2時間半加熱する。 |
加熱用の油(ひき肉用) | |
スペアリブ | |
加熱用の油(スペアリブ用) | |
にんじん | |
たまねぎ | |
ポロネギ(白い部分のみ) | |
イタリアンパセリ | |
タイム | |
ローリエ | |
水 | |
白ワイン |
※圧力がかかっているときのサインは圧力鍋の種類によって異なりますが、今回は下の写真のようにオレンジのリングが一つ見える程度にキープしました。
説明書によると弱めの圧力となっておりもう一段階強くできます(オレンジリング2個分)。
オレンジリング2個分の長時間加熱は火力調整が難しくて音が鳴ってしまうためオレンジリング1個分にしました。
フローチャートで表すとこのような流れになります↓
ストックを作る上でのポイント
ブラウンポークストックの作り方の流れを知ってもらった所で最初に紹介した2点のポイントを説明していきたいと思います。
ポイント① 材料は薄くスライスし、うまみを十分に引き出す
前提として出汁を取るとは食材からうま味や風味を抽出することが目的になります。
理想を述べるなら食材に含まれるうま味を余すことなく水に移したいのです。
ではどうすればいいのか…
それがポイント①の食材を薄くスライスということです。
食材と水が触れる表面積を増やすことで効率よくうま味を引き出すことができます。
野菜においては繊維に対して垂直方向にして切ることで、細胞が壊れ、効率良くうま味を引き出すことができるので覚えておきましょう。
ポイント② 圧力鍋を使い、時短&食材の香りを閉じこめる
圧力鍋は密封することで鍋の中の圧力を高めることのできる調理器具です。
圧力を高くすることで水は100℃以上で沸騰します(多くの圧力鍋は水の沸点を120℃まで上げられます)。
つまり、ゆでる・煮込むなどの調理が通常(100℃)より高い温度で食材を加熱することができるのです。
“高い温度で食材を加熱すれば早く調理ができる“これは普段料理をしない人でも何となくわかることです。
なので、加熱調理の法則をもう少し踏み込んで調べてみました。
加熱によって食材が調理される過程を化学反応としてみるとだいたいどれくらい早く調理できるのかも計算できるそうです。
温度から化学反応の速度を予測するアレニウスの式を適用すると温度が10℃上昇するごとに化学反応の速度(調理される時間)は半分に短縮されることがわかっています。
つまり単純計算で100℃の水で60分かかる煮込み料理は110℃で30分、120℃で15分で出来上がることになります。
圧力鍋で時短される仕組みをまとめると
①鍋の中を密封する
②密封された状態で加熱すると空気が膨張し、中の圧力が高まる
③高圧状態になり、水の沸点が上昇(100℃→120℃)する
④高い温度で食材が加熱されるため早く調理が終わる
となります。
また、圧力鍋は密封することから煮込む過程で湯気と一緒に逃げていくはずの香りの成分を鍋の中に閉じ込める効果があります。
つまり、香草を使い、食材の風味を引き出すことがポイントとなる今回のストックにもってこいの調理器具なのです。
逆に密封することで料理の香りが悪くなるような灰汁(アク)が強い食材や煮崩れのしやすい食材は圧力鍋には向いていないため注意しましょう。
どれくらい時短になるのか? 昔ながらの方法と比較
通常、ストックの仕込みはとてもかかる作業です。
圧力鍋を使用することで今回のブラウンポークストックはどれくらい時短になるのでしょうか?
大学時代に習った古典的なストックの仕込みと比較してみました。
比較してみると圧力鍋で仕込んだ方が圧倒的に時短になっています。
煮込みの過程で古典的な方法では12時間かかるのに対して圧力鍋で仕込んだものは2時間半で仕込めています。
フランス料理の原点である『エスコフィエフランス料理』にてストックのレシピをいくつか調べてみましたが短くても6時間は煮込みの工程があり、多くは10~12時間は煮込んでいました。
ただ、古典的な方法は手間がかかる分、勉強になるところも多いと感じました。
今回作成した圧力鍋で作るストックのレシピには煮込みの過程で出てくる灰汁(アク)と油を取り除くという工程は省かれており、材料をすべて入れたら蓋をして加熱していました。
灰汁(アク)はストックに雑味を与える要因であり、ストックの透明度も低くなります。
コンソメスープのような繊細さが求められるような料理に使用する際は灰汁(アク)を取り除くという工程は必須となります。
ただし、料理によっては少量の灰汁(アク)の苦みが料理にコクをだすこともあるため、用途に合わせてアクの取り方を調節することが大切なのではないかと私は考えています。
実践!ブラウンポークストック
今回の料理のポイントを抑えたところで、実際にブラウンポークストックを作ってみました。
僕は料理が上手くなるために次のように行動しています。
①レシピ通りにやる
②レシピの手順一つ一つの意図を考える
③意図があっているか検証する
④意図に沿って最適な手順に改善していく
実践のパートでは作った料理を通してどのように考えて料理をしているのかを共有していきたいので、以下のような疑問や課題のコーナーを設けました。
疑問or課題 (例)
(例)焼いたことによってでてきた脂やドリップは圧力鍋に入れるべき?
グリルでスペアリブを焼いたら、そこに油や肉汁が溜まっていました。
他にも、白い塊がありましたがこれはドリップが熱で固まったものだと思うので取り除きました。
残りの脂と肉汁は、ストックの味や見た目に悪い影響はないかなと考え、今回は圧力鍋に入れました。
この課題は繊細な味と透明感が要求されるコンソメスープを作る際に検証していきたいと思います。
疑問に思ったことや検証すべき課題を執筆時点での自分の考えをもとに考察したものなので、他の考え方や指摘事項ががあれば是非コメントに残していただけると嬉しいです。
それでは実践していきましょう!
① スペアリブをこんがり焼く
まずはスペアリブに油を塗り、焼くところから
残念ながら私のお家にはオーブンがまだないため備え付けのグリルで代用いたしました。(お掃除が面倒なので初めて使いました(o^―^o) )
温度条件がレシピ通りとはいかないので目標とする焼き色に合わせて時間を調節しました。
グリルで焼いたものがこちらになります↓
オーブンだと190℃、40分~45分でしたがグリルだと写真の焼き色にするまで50分ほどかかりました。
また、熱源が上部しかないため底・側面は焼き色が甘かったため追い返し地点で一度ひっくり返しました。
オーブンとグリルの違いを見せつけられたって感じです(笑)
オーブンは熱源が上下にあり、庫内の熱が逃げにくいように設計されている為、グリルより短い時間で安定した温度で
加熱することが期待できます(うーん、オーブン欲しい!)。
疑問1
焼いたことによってでてきた脂やドリップは圧力鍋に入れるべき?
グリルでスペアリブを焼いたら、そこに油や肉汁が溜まっていました。
他にも、白い塊がありましたがこれはドリップが熱で固まったものだと思うので取り除きました。
残りの脂と肉汁は、ストックの味や見た目に悪い影響はないかなと考え、今回は圧力鍋に入れました。
この課題は繊細な味と透明感が要求されるコンソメスープを作る際に検証していきたいと思います。
② 野菜の下処理・ハーブ類の計量
スペアリブを焼いている間に終わらせてしまいましょう。
人参玉ねぎポロネギは薄切りにハーブ類は計量しておきます。
疑問2
野菜はどれくらい薄切りにすればいいんだろう?
実践前は、薄切りにする理由は食材に含まれるうまみを最大限に引き出すことなので、
5㎜~10㎜ぐらいがいいのかなと考えました。
しかし、YouTubeでレストランの仕込み動画などを見てみると結構、厚く切っていた為、
長時間煮込むことを加味すると少し厚くても食材のうま味を十分に引き出せるのかなと考えました。
薄すぎると濾す際に固形物が通り抜けてしまい、スープが濁ってしまうのかもしれませんね。
課題1
ハーブ類は束ねて入れるといいかも!
今回の反省です。
ストックを抽出した後、スペアリブは再利用したいので取り除きます。
この時、ハーブ類を束ねていなかったのでバラバラになって取り除くのが大変でした。
香草類を束ねて入れる方法はブーケガルニといいます。
大学の調理学実習で習ったんですけどね💦迂闊でした。
③ ひき肉を炒める
圧力鍋に豚ひき肉を濃い茶色になるまで炒めました。
色はこんな感じ↓
脂がかなり出ていました。
スペアリブやひき肉に焼きを入れるのはストックに香ばしさを加え、パンチを効かせるためです。
食材を加熱した時、茶色くなり香ばしさが増すのはメイラード反応と呼ばれる化学反応によるものです。
メイラード反応は食材に含まれる糖とアミノ酸が加熱によってくっつき香気成分が生成される反応で、パンやケーキを焼いた時、表面がきつね色になるのもメイラード反応によるものです。
アレンジ ブラウンからホワイトへ
スペアリブとひき肉を焼かずに仕込むことで“ブラウン“ストックから”ホワイト“ストックに代わります。
ホワイトストックはブラウンストックに比べてやさしい味になります。
用途によって使い分けるといいでしょう、スペアリブは下茹でをしてから煮込むと風味がよくなります。
スペアリブとひき肉を焼かずに仕込むことで“ブラウン“ストックから”ホワイト“ストックに代わります。
ホワイトストックはブラウンストックに比べてやさしい味になります。
用途によって使い分けるといいでしょう、スペアリブは下茹でをしてから煮込むと風味がよくなります。
④ 圧力鍋に材料をすべて加え、中火で加熱する
残りの材料をすべて加えて中火で加熱します。
密封するため、蓋をしてロックすることを忘れずに!
⑤ 圧力がかかったら弱火・2時間半加熱する。鍋を冷まし、濾し器で固形物を濾す。
作り方で説明したようにオレンジリング1個分で2時間半加熱しました。
一度圧力がかかると弱火でも十分に圧力がかかった状態をキープできることがわかりました(少しでも火力が高いと圧力がかかり過ぎて音が鳴る!)。
長時間の加熱なので目の届く範囲で自由な時間を過ごしましょう。リラックスしすぎて寝ないようにね~
~2時間半経過~
加熱が終わったら圧力がかかった状態になるまで冷まします。
鍋を流水で冷やすとすぐに圧力が下がります(この方法はレシピによっては加熱不足につながります 例:ご飯を炊く時とか)。
続いて圧力鍋を開けて濾し器で濾します。
固形物とストックを分ければいいのでキッチンペーパーを敷いたザルで濾してもいいと思います。
残った固形物はメインではないですが普通に美味しそうと思いました。
もったいないのでこのあと同じように水と白ワインを加えて二番出汁を取った後、スペアリブだけ再利用してトマト缶を加えたスープを作りました。
二番出汁でも塩こしょうとトマトのうま味を加えただけでめちゃくちゃ美味しかったです!
そして完成したブラウンポークストックがこちら
上層の油で濁っている様に見えますが冷やして下層を見ると澄んだ茶褐色のストックになりました。
完成したストックを少量の塩と一緒に飲んでみたところ白ワインによる少しの苦みがコクを引き立てているような味でした。
ワインを入れたストックは初めて作ったので新たな発見です。
和風洋風問わずうま味の抽出液をの味見をする際は、塩分と一緒に味見しましょう。
一度、塩分有り無しで飲み比べてみるとわかるのですが、うま味単体だと味がわかりにくいのです。
疑問3
ストックに浮いている脂はとりのぞくべきか?
今回のレシピでは脂を取り除くという記載はありませんでした。
結論としては用途に分けて脂とストックの使用比率を変えるのがベストではと考えます。
コンソメスープに使用する場合は浮いている脂は見た目が良くないですし、胃もたれする
スープになってしまいます。
しかしソースに使用する際は脂を乳化(マヨネーズみたいに水分と油分がなじんだ状態)
させてコクを引き出すこともできるので比率を調節するといいのかなと思います。
脂とストックは分けてとっておいてレシピに載っている油の置き換えで使用すると
いいかもしれません。
まとめ
今回はブラウンポークストックを作りました。
最初なのでレシピ通りに材料を薄く切り、圧力鍋を使って時短することを意識して作ってみました。
実際に作ってみて圧力をかける前に灰汁(アク)をとることや完成したストックに浮いている油の扱いはどうすればいいのかといった課題が見えてきました。
ブラウンポークストックは手間と時間がかかり、料理の材料の一部でしかありませんが、1回作るだけでも様々な課題や発見が得られとても勉強になりました。
スープを作る時の市販のコンソメの置き換えで使用するだけでも風味とうま味が全然違うと思うのでぜひ作ってみてください!
次回は作ったブラウンポークストックを使ってナンを添えたポーク・ウィンダルーを作っていきたいと思います!
名前からはどんな料理かは想像つかないと思いますが、次回まで楽しみにしていてください!
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