しょうがはショウガ科に分類される草本性の熱帯植物の地下茎で辛みと香りがあるのが特徴です【1】。
ショウガ科の仲間としてカルダモン、ターメリックなどの香辛料があります。
料理ではカレーのミックススパイス、ジンジャーエールなどの飲み物のアクセント、魚の煮付けの臭み消しなど幅広い用途で使用されます。
日本の主要な生産地は高知県、熊本県、千葉県で生産量1位の高知は国内生産の約45%を占めています【2】(2020年度調査)。
しょうがは出荷方法によって分類されます。
収穫後すぐに出荷されるものは新しょうが、収穫後低温・低湿の貯蔵庫での保管を経て通年で出荷するのは根ショウガ(古根しょうが、囲いしょうが)と呼ばます。
この記事では主に根しょうがについて紹介します。
・しょうがは根しょうがと新しょうがに分けられる。
旬の時期は根しょうがは通年、新しょうがは栽培方法によって異なる
詳しくは→1.生産方法と旬の時期 しょうがはこのようにしてできるへ
・しょうがの辛味とさわやかな香りはジンゲロールという成分にあり!
ジンゲロールは調理加工によって変化する。
詳しくは→2.しょうがの味と香りへ
・しょうがにはビタミンやミネラルが特別多く含まれていない。
しかし、しょうがの成分であるジンゲロールにはいくつかの生理作用が示唆されている。
詳しくは→3.しょうがの栄養評価へ
・しょうがの調理方法は香りを引き出すことがポイント!
生の状態はカビやすいので保存方法に注意!
詳しくは→4.しょうがの選び方、調理方法、保存方法へ
1.生産方法と旬の時期 しょうがはこのようにしてできる
しょうがは、種からではなく、サトイモのように地下茎が種となり栽培されます。
植え付けは、露地栽培の場合、4月から5月に行われ、収穫は9月から11月にかけて行われます。
収穫後、約2か月間貯蔵されます。貯蔵することで水分が抜け、しょうがは硬くなり、辛みが増します。
貯蔵したしょうがは年間を通じて流通されるため、旬の時期はありません*1。
そのため新しょうがの旬はハウス栽培では6月から8月、露地栽培では9月から11月にかけてとなります。
2.しょうがの味と香り
しょうがを食べると、ピリッとした辛味と爽やかな香りが感じられます。
この風味の秘密は、ジンゲロールと呼ばれる成分にあります。
ジンゲロールはしょうが特有の香りと辛味の両方に関与するフェノール性芳香化合物です。
さらに、しょうがは乾燥や加熱調理によってジンゲロールが変化します。
しょうがを乾燥させると、ジンゲロールが脱水反応を起こしてショウガオールに変わります【4】。
ジンゲオールはジンゲロールの2倍の辛さを持っており、そのため、乾燥したしょうがは生のしょうがよりも辛さが際立ちます。
さらに、加熱調理によってジンゲロールとショウガオールの一部はジンゲロンに変化します【4】。
ジンゲロンは、甘くスパイシーな香りと辛味をもたらし、しょうがの風味をより複雑で深みのあるものにします。
3.しょうがの栄養評価
しょうがの栄養素について、日本食品成分表に記載されている項目に関しては特に目立った栄養素はなく、1回の使用量も少ないことからビタミンやミネラルの供給源としては期待できません。
しかし、しょうがに含まれるジンゲロールは抗酸化作用や抗菌作用、抗神経炎症作用など、多くの生物学的活性が研究されています【5】。
また、しょうがの効果の有効性を確認した臨床試験の論文もいくつか報告されています。
しょうがと人体に関する複数の論文まとめた包括的な系統的レビューによると制吐機能(吐き気の抑制)、胃腸機能、鎮痛機能、炎症作用、代謝の改善といった効果が示唆されています【6】。
制吐機能・胃腸機能
制吐機能についての研究では、しょうがが化学療法によって引き起こされる吐き気や妊娠悪心などの症状を軽減する効果が示唆されています。
また、胃腸機能に関しては、しょうがが胃排出速度を促進し、胃機能を改善する効果が報告されています。
鎮痛機能・炎症作用
しょうがは炎症や痛みの緩和にも効果があることが研究で示されています。
特に関節炎や月経困難症などの症状に対して効果が報告されています。
代謝の改善
しょうがの摂取が代謝の改善にも寄与することが示されています。
研究では、しょうがが血糖や脂質レベルを改善し、肥満や糖尿病などの症状に有益であることが報告されています。
副作用
副作用としては胃腸関連の症状が報告されており、胸やけが挙げられています。副作用は、しょうがの胃腸保護効果を逆転させることが原因と考えられます。
これらの機能は特定の疾患を対象としたしょうがの影響を示唆するものであり、現状の研究報告では症状によって当てはまらない可能性を否定できていません。
また、しょうがの粉末をカプセル化したものを摂取した場合の研究が多数であり、調理の影響なども加味していないことから食品としてしょうがを摂取する場合の効果を直接保証するものではありません。
健康効果を期待する際には、医療専門家の意見や摂取方法に関する適切な情報を確認することが重要です。
4.しょうがの選び方、調理方法、保存方法
しょうがの選び方
針しょうがのように生の状態で食べる場合は芯が少ないものを選びたいところです。
芯が少ないしょうがを見つけるためには、硬すぎず柔らかめのものを探してみてください。
また、しょうがの風味が強すぎると感じる場合は、あっさりとした風味の新しょうがを選ぶと良いでしょう。
しょうがはかびやすいので、購入する際には包装袋に結露が少ないものを選ぶと良いです。
しょうがの調理方法
生、加熱、ミックススパイス、ジンジャーエールなどの幅広い調理方法があります。
切り方
生で食べる場合は繊維質な食感の影響を少なくする繊維を断つ切り方がおすすめです。
- おろししょうが
- 針しょうが
- 刻みショウガ
- みじん切り
加熱調理
みじん切りにしたしょうがを最初に油と一緒に炒めて香りを移すテンパリングという方法があります。
しょうがの香気成分は加熱で飛びやすいので具材を短時間で炒める料理に有効です。
長時間の加熱調理でしょうがの新鮮な香りを利用したい場合は具材を先に炒めた後テンパリングした油をかける方法もあります。
魚の臭み消し
魚の煮つけなどと一緒にひとかけら入れる、刻みしょうがなどで効果的です。
表面積が大きい切り方ほどしょうがの香りが強くなります。
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しょうがの保存方法
生の状態はカビやすく、また乾燥によりしわしわになります。
保存性を高めるためにはしょうがの表面に水分を付けない、乾燥させるなど微生物を増殖させない工夫が必要です。
生の状態で保存
しょうがの表面に付着する結露はふき取りキッチンペーパーでくるみながら保存袋などで適度な湿度を保ちながら保存することで長持ちします。
保存目安は1~2週間です*1。
使い切れない場合は冷凍保存、乾燥、オイル漬けがおすすめ!
冷凍保存
しょうがの皮を剥きすりおろします。
使いやすいようにシート状にしてラップで包み冷凍で保存します。
使うときは必要な分だけ割って使うことができます。
加熱調理に使うなら風味に大きな変化が少なく長期保存に向いている方法です。
保存目安は3~6か月です。
乾燥
しょうがを1㎜の薄切りにして天日干しで3~4日で乾燥されます。
天日干しのネットがあると省スペースで衛生的です。
食品乾燥機を利用することで効率的に作ることができます。
1㎜の薄切りならば50℃1時間の乾燥で乾燥します。
加熱により香気成分が飛びやすいので乾燥したらすぐに取り出しましょう。
乾燥したしょうがはフードプロセッサーかすり鉢で粉末にすることで料理に使いやすくなります。
しょうがのオイル漬け
しょうがを少量の油を使って弱火で3分ほど加熱したあとアルコール消毒した瓶に入れて油を追加して作ります。
しょうがと油は2:5の割合が目安です。
真空調理を利用すると風味を逃がさず加熱することができます(加熱時間:70℃、3時間)。
食材の状態、保存環境によって保存期間は変化します。
使用する際はカビの有無や乾燥状態、冷凍の場合は冷凍焼けしていないかなど食材の状態を見たうえで使用するか各自で判断してください。
【1】植物和名ー学名インデックス YList: Zingiber officinale Roscoe
【2】農林水産省 作物統計調査 / 作況調査(野菜) 確報 令和4年産野菜生産出荷統計
【4】香西みどり監訳:マギーキッチンサイエンス -食材から食卓まで、共立出版株式会社、2021、P417
【5】Shivraj HariramNileら、Chromatographic analysis, antioxidant, anti-inflammatory, and xanthine oxidase inhibitory activities of ginger extracts and its reference compounds
【6】Nguyen Hoang Anhら、Ginger on Human Health: A Comprehensive Systematic Review of 109 Randomized Controlled Trials
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