セロリは、セリ科に分類されるヨーロッパ原産の植物です【1】。
同じセリ科の食材としてにんじんやパクチーなどがあります。
主な食用部位は茎(葉柄)と葉で他にも乾燥させた種子がスパイスとして扱われます。
セロリの品種は緑色種、中間種、白色種があり日本で流通しているのは中間種がほとんどです。
中間種は緑色種よりは風味が少なくクセが無いため日本では好まれている品種です。
この記事では主にセロリの中間種について紹介します。
セロリの特徴的な風味は肉や魚の臭みと消して煮込み料理の風味を良くする目的などで使われます。
・セロリは収穫までに時間がかかる食材
太い茎を持つセロリにするためには本株に栄養を集中させて作る。
詳しくは→1.生産方法と旬の時期 セロリはこのようにしてできるへ
・セロリの葉は茎よりも風味が強い
セロリの葉はにおいを打ち消すのに有効。
詳しくは→2.セロリの風味と食感へ
・セロリの食物繊維、ビタミン・ミネラル類の含有量は標準的な淡色野菜にあたる
詳しくは→3.セロリの栄養評価へ
・セロリの葉は食べにくい? おいしい食べ方について
詳しい食べ方は→4.セロリの選び方、調理方法、保存方法へ

セロリの栽培から収穫までの流れの例
1.生産方法と旬の時期 セロリはこのようにしてできる
セロリの生育期間は4ヵ月~5ヵ月ほどで葉野菜の中では収穫に時間がかかる食材です。
セロリは極端な暑さや寒さに弱く10℃以下で栄養成長から生殖成長に切り替わり茎や葉に栄養がいかなくなるため露地栽培では10~11月ほどで収穫します。
ハウス栽培もされていることから通年で流通していますがセロリは冷涼な気候を好むため秋が旬であるとされています。
露地栽培のセロリの場合種まきの時期は一般的に5~6月頃で行われます。
初期成長が遅く苗作りが難しいとされています。
6~8月頃になると畑に植え付けが行われます。
ある程度成長し芽が分化してくると本株に栄養を集中させるために根本の細い茎を摘む“脇芽かき”という作業が行われます。
追肥は半月に1回の周期で行われます。
一般に流通しているセロリのほとんどは軟白栽培という方法で生産されており収穫の1ヶ月前で茎の部分を遮光しやわらかく食べやすいように処理します。
10~11月頃で収穫時期を迎え、流通時には消費やすい量に切り分けられます。

セロリ中に見出されているフタリド類【2】
2.セロリの風味と食感
セロリはセリ科特有の風味と歯ごたえがあり、シャキシャキとした食感が特徴です。
一般的にセロリの茎と葉では葉のほうが風味が強いとされています。
セロリの主要な香気成分はフタリド類と呼ばれ、セリ科植物以外にもクルミに含まれます。
セロリの風味成分は肉や魚の嫌なにおいを打ち消し、うま味や風味を増強させることが官能評価試験にてわかっています【2】。
この官能評価試験は、チキンブロスにセロリ抽出物を添加したものとそうでないものを用意し、「甘味」、「うま味」、「油や肉の臭みがない」などの項目を数値で評価します。
セロリ抽出物だけでなく、フタリド類をチキンブロスに添加した場合でもスープの風味が増強され、ノーズクリップで嗅覚の影響を減らした場合は風味の増強を識別できなかったことから、フタリド類の嗅覚刺激が「甘味」、「うま味」などの味覚刺激を増強するとされています。
セロリのシャキシャキとした食感は植物の細胞壁によるものです。
セロリの細胞内に水分が十分にあり膨れ上がった状態では、細胞壁が強く支持され、食感がクリスピーに保たれます。
3.セロリの栄養評価
セロリの食物繊維やビタミン・ミネラル類の含有量は、一般的な淡色野菜に近い値です。
カリウムは他の淡色野菜に比べ比較的多く含まれています。
風味が強く苦手な場合は、他の淡色野菜と置き換えても問題ありません。
セロリは煮込み料理などで使用することで、料理の風味を増強し、減塩効果も期待できます。
4.セロリの選び方、調理方法、保存方法
セロリの選び方
新鮮なセロリの選ぶためには葉や根本を確認するといいでしょう。
葉の部分は時間経過で緑→黄緑→黄色と色あせていきます。
新鮮なものは色鮮やかな緑色をしています。
根本の茎の部分は土などが付きやすく腐敗が起こりやすい部位です。
新鮮な状態では白色をしていますが腐敗が進むと茶色に変色していきます。
セロリの調理方法
セロリには筋があるため、下処理で取り除くと食感がよくなります。
取り除いた筋にも香気成分が含まれているので、他のハーブやスパイスと一緒に縛って入れてブーケガルニに活用できます。
セロリの風味を活かした調理方法がおすすめです。
セロリの風味をそのまま楽しみたい場合は、サラダやスティック野菜の材料にすると良いでしょう。
一方、セロリの風味が苦手な人は、煮込み料理やスープの風味付けに使うと良いでしょう。
切り方
繊維質な野菜なので繊維を断つ切り方をすることで比較的食べやすくなります。
しっかりと歯ごたえのある食感にしたい場合や長時間の煮込み料理の場合は繊維に沿って切る方法がおすすめです。
ブイヨンの風味付けに使用する場合は鍋に入るサイズで大きめに切りできるかぎり煮崩れが起こらないようにしましょう。
加熱調理
セロリはスープの具材以外にも炒めものにも使えます。
水を使った調理方法に比べ炒め料理は具材そのものに香りが残りセロリの風味を強く感じることができます。
しょうゆとツナを使って炒めた料理がおすすめです。
葉の部分は香りが強く料理に使いにくいですがブイヨンに入れると香りがとても良くなります。
ブイヨンの作り方などをみると茎の部分が主に使われていますが葉の部分のほうが香りが強くおすすめです。
葉がちぎれやすいですが濾してしまえばよけいな濁りなども起きません。
セロリはブイヨンの風味付けという基準ではたまねぎやにんじんなどの他の香味野菜より影響があるといえます。
セロリの保存方法
野菜は収穫後も生きているので、時間が経つにつれて風味や栄養素が減少してしまいます。
そのため他の食材と同様にできる限り早く消費した方がおいしく食べることができます。
セロリを新鮮な状態で保つためには、セロリの細胞の呼吸を制御し冷蔵庫で保存することが重要です。
セロリは一般的に袋で包装した状態で販売しておりこの袋が鮮度の維持に大きく影響しています。
袋を取った状態で保管すると冷蔵でも2~3日でしなびてしまい食感が悪くなりますが袋に入れた状態だと葉の色の変化などはありますが1週間近くはしなびることなく保存することができます。
ただし結露がある場合は定期的に水分をふき取り腐敗させないようにしましょう。
長期保存には茎の部分はオイル漬け、葉は乾燥させる方法がおすすめです。
オイル漬けにする場合は良く洗って1%の食塩水で軽くゆでた後、水気を切りオイル漬けにしましょう。
にんにくやハーブと一緒に入れると風味が良くなります。
セロリの葉を乾燥させるにはオーブンで低温で乾燥させる方法が衛生的で有効です。
食品乾燥機があれば温度管理しやすくうまくできるでしょう。
乾燥させることで新鮮な風味はなくなりますが水分が少なることでより重厚感のある香りに仕上がります。
セロリのオイル漬けや乾燥したものはミートソースのようなパスタソースの具材によく合います。
参考文献
【1】植物和名ー学名インデックス YList:Apium graveolens L.
【2】中谷延二監修:スパイス・ハーブの機能と最新応用技術、株式会社シーエムシー出版、2017、PP198-202
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