牛すね肉はうしのふくらはぎにあたる部分の肉で肉質は硬くコラーゲンを多く含む部位です。 硬い肉質ですが長時間煮込むことで軟らかくなるためシチューやカレーといった煮込み料理に適した部位です。
・牛すね肉はコラーゲンとうま味成分を含み、煮込み料理に適した食材である
詳しくは→1.牛すね肉の特徴 風味や食感についてへ
・牛すね肉は脂質が少なくたんぱく質や鉄分、ビタミンB群を豊富に含む食材
ベーコンは体に悪いという話があるが… 詳しくは→2.牛すね肉の栄養成分へ
・牛すね肉は煮込み料理の他にもコンソメスープの材料に向いている食材である
詳しくは→3.牛すね肉の選び方・調理方法・保存方法へ
1.牛すね肉の特徴 風味や食感について
食肉のたんぱく質は、筋形質たんぱく質、筋原繊維たんぱく質、肉基質たんぱく質に分類されます【2】。
筋形質(筋漿) たんぱく質 |
ヘモグロビンやミオグロビンなど筋原線維間に溶解しているたんぱく質。全たんぱく質の約30%を占める。 |
筋原繊維 たんぱく質 |
ミオシンやアクチンなど筋肉の収縮に関与するたんぱく質。 |
肉基質 たんぱく質 |
筋膜や腱などの結合組織の成分。主成分はコラーゲン。 |
牛すね肉は肉基質たんぱく質を多く含み、主成分のコラーゲンにより肉質は硬い傾向になります。 長時間煮込むことで軟らかくなるのはコラーゲンの性質によるものです。 コラーゲンは水を加えて加熱するとゼラチンに変化し軟らかくなります。 コラーゲンの結合は月齢を増すごとに強くなるため老いた牛のすね肉は加熱しても硬い傾向にあります。 料理で仔牛のすね肉が好まれて使用されるのはコラーゲンを多く含み加熱により容易に軟らかくなる為です。 また、すね肉は足回りの肉で運動量の多い部位であるため脂身は少なくうま味成分を多く含みます。 そのため料理に加えるとうま味が料理全体にコクをもたらします。
2.牛すね肉の栄養評価
牛すね肉は日本食品成分表に記載されていないため牛すね肉に近い部位で肉質も近いもも肉の成分値を参考に栄養評価をしていきます【3】。
スマホ版は横スクロールで表全体を確認できます。
脂質 | 炭水化物 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
食材名 | エネルギー kcal | 水分 g | たんぱく質 g | 脂質 g | 飽和脂肪酸 g | n-3系不飽和脂肪酸 g | n-6系不飽和脂肪酸 g | コレステロール mg | 炭水化物 g | 食物繊維 g |
和牛 もも 脂身つき 生 | 196 | 65.8 | 19.5 | 13.3 | 5.11 | 0.02 | 0.54 | 69 | 0.4 | (0) |
輸入牛 もも 脂身つき 生 | 148 | 71.4 | 19.6 | 8.5 | 3.22 | 0.05 | 0.20 | 61 | 0.4 | (0) |
・Trは未測定であるが、文献等により微量に含まれていると推定されるもの
無機質 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
食材名 | ナトリウム mg | カリウム mg | カルシウム mg | マグネシウム mg | リン mg | 鉄 mg | 亜鉛 mg | 銅 mg | マンガン mg | ヨウ素 μg |
和牛 もも 脂身つき 生 | 49 | 330 | 4 | 22 | 180 | 1.4 | 4.5 | 0.08 | 0.01 | – |
輸入牛 もも 脂身つき 生 | 41 | 310 | 3 | 21 | 170 | 2.4 | 3.8 | 0.08 | 0.01 | – |
ビタミン | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
食材名 | ビタミン A μg | ビタミン D μg | ビタミン E mg | ビタミン K μg | ビタミン B1 mg | ビタミン B2 mg | ビタミン B6 mg | ビタミン B12 μg | 葉酸 μg | ビタミン C mg |
和牛 もも 脂身つき 生 | Tr | 0 | 0.3 | 6 | 0.09 | 0.20 | 0.34 | 1.2 | 8 | 1 |
輸入牛 もも 脂身つき 生 | 5 | 0.2 | 0.5 | 4 | 0.08 | 0.19 | 0.44 | 1.5 | 8 | 1 |
ビタミンE :α-トコフェロールの値を記載
牛もも肉は赤身肉であるため脂質は低くたんぱく質を多く含みます。
無機質は鉄を多く含まれるため鉄不足で貧血が気になる方に有効です。
また、肉類全般に言えることですがビタミンB群を多く含むため不足しがちな栄養素を補える優秀な食材といえます。
ただし、赤身肉の過剰摂取はがんのリスクが上昇する恐れがあるため注意が必要です。
国際がん研究機関(IARC)の報告によると加工肉ほど強い証拠が見出せませんが、関連があると仮定すると、毎日継続して1日当たり100グラム摂取するごとに、大腸がんのリスクが17%増加するといわれています【4】。
令和元年国民健康・栄養調査の報告によると、日本人の1日あたりの牛肉の平均摂取量は15.2gとなっているため多くの日本人にとっては牛肉の摂取の恩恵のほうが大きいと考えてよさそうですが、毎日牛肉を食べている人は気を付けたほうがいいかもしれません【5】。
3.牛すね肉の選び方、調理方法、保存方法
牛すね肉の選び方
牛すね肉は比較的に珍しい部位で精肉店やネット通販での方法で手に入れるのが一般的です。
ネット通販では新鮮な肉を選ぶのは難しいですが新鮮な肉の選び方はいくつかあります。
牛肉は鉄分が多いため豚肉や鶏肉よりも暗めの赤色をしていますが、新鮮な肉は鮮やかな赤色をしています。
牛すね肉としておいしいものは脂身がきめ細かく均一な肉質なものになります。
牛すね肉がスーパーで売っていない場合はネット通販での購入がおすすめです。
送料がかかってしまいますが手軽に入れることができます。
牛すね肉の調理方法
牛すね肉は長時間煮込んで食べるのが一番おいしい食べ方です。
下処理
余分な脂身を取り除き筋があれば切ったうえで大きめの角切りにすることで肉感のある料理にすることができます。
脂身は焼くことで風味のいい脂がでてくるのですき焼きの牛脂のかわりに使用してもいいかもしれません。
加熱調理
牛すね肉はカレーやシチューのようによく煮込んで肉を食べる以外にも少し贅沢ですが、うま味成分とコラーゲンを抽出してコンソメスープの材料にするのも有効です。
脂身が少なくうま味成分とコラーゲンを多く含む部位であるため、おいしいコンソメスープを作るのにピッタリの食材といえます。
関連レシピ
牛すね肉の保存方法
牛肉は鮮度が落ちやすいため冷蔵の場合2日以内に消費するのが好ましいです。
しばらく使わない場合は冷凍保存がおすすめで保存目安は90日ほどになります*1。
解凍後はドリップが出てしまうので味は落ちてしまうので冷蔵保存で早めに食べてしまうのがおすすめです。
生の状態よりも調理した状態で冷蔵保存した方が保存性は良くなりますが時間経過で肉に水分がでていき食感は悪くなります。
*1 紹介する保存方法の保存期間はあくまでも目安です。
食材の状態、保存環境によって保存期間は変化します。
使用する際はカビの有無や乾燥状態、冷凍の場合は冷凍焼けしていないかなど食材の状態を見たうえで使用するか各自で判断してください。
参考文献
【1】菅隆幸ほか:食品化学・材料学、朝倉書店、1982、P115
【2】加藤保子、中山勉編:食品学Ⅱ 食品の分類と利用法改訂第2版、株式会社南江堂、2016、P105
【8】日本食品成分表 2023八訂
和牛 もも 脂身つき 生
輸入牛 もも 脂身つき 生
食品成分表はエクセルの栄養計算ソフトが付いている医歯薬出版がおすすめです!
5年おきに改訂しているため最新版であることを確認した上で購入したほうがいいです(2024時点は8訂が最新)。
【4】PDF:IARC Monographs evaluate consumption of red meat and processed meat
国立がん研究センターにて赤肉・加工肉のがんリスクについて解説を日本語で閲覧できます(二次情報)。
コメント