りんご

りんごは、バラ科に分類される中央・西アジア原産の植物です【1】。
同じバラ科の食材としてナシ、マルメロ(セイヨウカリン)、モモなどがあります。
特にナシとマルメロは近縁関係にあります。

りんごは果実の分類上は仁果類に分類されます。
仁果類は食用部である果実が花の一部が極端に肥大したもので偽果と呼ばれます。
果実の底を見ると花の痕跡を見ることができます。
日本では20数品種のりんごが市場に出回っており、そのまま食べる以外にも缶詰、ジュース、ジャム、お酒など様々な加工をされて食べられています。

この食材のポイント
・りんごの樹木が果実ができるまで10年近くかかる
果実ができはじめても枝の剪定や果実の着色管理などの手入れが重要。
詳しくは→1.生産方法と旬の時期 りんごはこのようにしてできる
・りんごの香気成分はβ‐ダマセノン
β‐ダマセノンはフローラルなバラの香りがします。
その他のりんごの呈味成分や色素成分については
2.りんごの特徴 風味や食感、品種ごとの違いについて
・りんごの主要な食品成分は→3.りんごの栄養評価
・りんごは品種ごとに合った調理方法を選ぶのがおすすめ!
詳しくは→4.りんごの選び方、調理方法、保存方法
 
りんごの収穫までの流れの例【2】

1.生産方法と旬の時期 りんごはこのようにしてできる

りんごは野菜と異なり、果実が十分にできる樹木を作るまでに10年近く必要といわれています。
りんごは冷涼な気候を好む果実であるため主に青森県をはじめとする東北地方で生産されています。
東北地方以外では長野県がりんごの生産地として有名で生産量2位の地位を占めています。
長野県の高地で冷涼な気候がりんごの栽培に適しているとされています。
収穫時期は9月から11月で秋から冬の間が旬時期になります。

りんごは①枝の剪定 ②摘花・受粉 ③摘果・袋かけ ④着色管理を経て収穫されます。

枝の剪定

りんごの栽培は枝の剪定から始まります。
りんごがきれいな赤色に色付くには日光がとても重要とされています。
枝の剪定は日光が樹木の奥まで届くように形を整えるために行われます。

また剪定は花芽の量を事前に調整し、樹木に過剰な消耗をさせないようにする役割もあります。

摘花・受粉

りんごに花が咲き始めたら摘花という作業を行います。
摘花は余分な花を摘み取り樹の貯蔵養分の消耗を防ぎます。

受粉はミツバチを用いた方法と手作業による方法で行います。
りんごは同じ品種の花粉では受粉しない性質があるため異なる品種の花粉を用いて受粉を行います。

摘果・袋かけ

りんごは1株につき5~6個の果実を実らせますが、葉の枚数にたいして果実の数が多すぎると栄養が分散して、りんごの品質が低下します。

基本的には摘果は2回に分けて行われます。
1回目は開花後30日ほどでざっくりと摘果を行い、2回目は開花後60日までに行い、最終的な果実数になるように調節します。
2回に分けて行うことで不作のリスクを減らします。

摘果を終えたら果実に袋かけを行い、傷や着色障害を防止します。

着色管理・収穫

9月頃になると収穫に備えて着色管理を行います。
袋は取り外し果実が日光に当たるようにします。
着色管理は均一に光を当ててりんごをまんべんなく赤色に着色します。
具体的には地面に反射シートと敷き、底面にも光が当たるようにしたり、果実の向きを変えて光の当たる角度を変える玉まわしを行います。
他にも果実にかかる葉を取り除く葉つみや果実の重さで枝が折れないように支柱入れを行います。
果実が適切に着色された段階でりんごの収穫されます。

2.りんごの特徴 風味や食感、品種ごとの違いについて

りんごはクライマクテリック型果実で収穫後も自身から発せられるエチレンにより熟成が進む果実です。
他の果物の近くにりんごを置くと追熟が早くなるのはりんごから発せられるエチレンの影響によるものです。
りんごの品種は大きく分けてリンゴ酒用品種、生食用品種、調理用品種、兼用品種に分けられます。
リンゴ酒用品種は苦みと酸味が強く、調理用品種は酸味が強いです。
兼用品種は生食にも調理にも適している品種でゴールデン・デリシャスやグラミー・スミスなどがあります。

りんごの呈味成分

りんごの甘味は果糖(フルクトース)、ショ糖(スクロール)、ブドウ糖(グルコース)によるものです。
品種によって成分の割合は異なりますが、0.5%ほどのソルビトールを含み、りんごに清涼感のある甘味をもたらします。
ソルビトールは消化されない糖アルコールを含むためりんご果汁を一度に大量に飲むと腹部に不快感を生じることがある為、注意が必要です【3】。

りんごの酸味成分はリンゴ酸があげられ酢酸よりも爽やかな酸味を感じることができます。

りんごの香気成分

りんごの主要な香気成分はβ‐ダマセノンと呼ばれ、フローラルなバラの香りがします【4】。
その他にも多くの果実に共通するエステル類の香気成分と草の香りがするアルデヒド類の香気成分を含みます。

りんごの香気成分

りんごの皮には香気成分を作りだす酵素を多く含むため、香気成分のほとんどは皮に含まれます。
ジャムやコンポートを作るときは香り付けのために皮をあとで取り出せるようにして入れる方法もあります。

りんごの食感

りんごは細胞間に隙間があり、体積の4分の1が空気といわれています【3】。
この構造がりんごの食感に由来します。
またりんごの細胞壁にはペクチンを多く含むためジャム作りに適しています。

りんごの色素成分

りんごの赤色は水溶性アントシアニン色素によるものです。
また、黄色や乳白色の品種のりんごの色素はβ-カロテンやルテインなどの脂溶性カロテノイドによるものです。

りんごを剥いた後に変色してしまうのは酵素の酸化によるものです。
変色を防ぐためには熱を加えて酵素を失活されるかレモン汁を加えて酸性条件下にし酵素の反応を抑える方法があります。
熱を加える方法はリンゴジュースに有効な方法です。

3.りんごの栄養評価

りんごは日本食品成分表で様々な調理方法での100gあたりの成分値が記載されています【5】。
今回はりんごの皮つきのものと皮なしの成分値を抜粋しました。

スマホ版は横スクロールで表全体を確認できます。

    脂質炭水化物
食材名エネルギー    
kcal
水分       
g
たんぱく質    
g
脂質       
g
飽和脂肪酸    
g
n-3系不飽和脂肪酸
g
n-6系不飽和脂肪酸
g
コレステロール  
mg
炭水化物     
g
食物繊維     
g
りんご
皮つき 生
5683.10.20.30.040.010.06(0)16.21.9
りんご
皮なし 生
5384.10.10.20.01Tr0.03(0)15.51.4
・(0)は未測定であるが、文献等により含まれていないと推定されるもの
・Trは未測定であるが、文献等により微量に含まれていると推定されるもの
・りんご皮つきの脂肪酸の成分値は類似食品から推計や計算により求めた値、または諸外国の食品成分表の収載値から借用した値、原材料配合割合を基に計算した値。

 無機質
食材名ナトリウム    
mg
カリウム     
mg
カルシウム    
mg
マグネシウム   
mg
リン       
mg
鉄        
mg
亜鉛       
mg
銅        
mg
マンガン     
mg
ヨウ素      
μg
りんご
皮つき 生
Tr12045120.10.10.050.040
りんご
皮なし 生
Tr12033120.1Tr0.050.020
 ビタミン
食材名ビタミン 
A
 
μg
ビタミン 
D
 
μg
ビタミン 
E
 
mg
ビタミン 
K
 
μg
ビタミン 
B1
 
mg
ビタミン 
B2
 
mg
ビタミン 
B6
 
mg
ビタミン 
B12
 
μg
葉酸   

 
μg
ビタミン 
C
 
mg
りんご
皮つき 生
2(0)0.420.020.010.04(0)36
りんご
皮なし 生
1(0)0.1Tr0.02Tr0.04(0)24
ビタミンA :レチノール活性当量の値を記載
ビタミンE :α-トコフェロールの値を記載

4.りんごの選び方、調理方法、保存方法

りんごの選び方

おいしいりんごの選び方は表面に傷が少なく、きれいな赤色をしているものを選ぶことです。
また、適度な硬さがありツヤのあるものを選ぶのが新鮮なものを選ぶコツです。

りんごの調理方法

皮むき

1個丸ごと皮むく方法と6~8等分にした後、皮を剥く方法があります。
個人的には等分してからのほうがきれいに素早く剥くことができます。

加熱調理

アップルパイやジャムなど加熱調理に向いているりんごは酸味が強くしっかりとした硬さをもつものがおすすめです。
フジや紅玉、ジョナゴールドなどが適した品種といえます。

焼きリンゴを作る際には、りんごの内部に空気が約4分の1含まれていることを考慮する必要があります。
焼きリンゴを作る場合、上部に穴を開けるのは、砂糖やバターを入れるだけでなく、りんごの内部の構造に関係しています。
なぜなら、りんごの内部に含まれる空気が加熱されると膨張し、りんごが割れる可能性があるからです。
そのため、焼きリンゴの内部の空気を逃がすために、りんごに穴を開けるのです。

りんごの保存方法

りんごは冷涼な環境を好むため冷蔵保存で問題ありません。
果物は呼吸が活発であるため熟成している場合は特に冷蔵保存したほうが呼吸を抑制し、保存性を高めることができます。
また、ラップで巻くか保存袋に入れておくとりんご周辺の空気の組成を変えることができ保存性が高まります。

周辺に野菜や果物がある場合はリンゴから発せられるエチレンで傷みやすくなってしまうのでその場合も保存袋に入れておくのがおすすめです。
保存性が高い果物なので適切に保存した場合の保存期間の目安は2~3週間ほどになります*1。

りんごの冷凍保存は腐敗は大きく防止できますが、細胞が壊れ食感を大きく損なうため加熱調理のみ有効です。
保存期間の目安は6か月ほどです。

*1 紹介する保存方法の保存期間はあくまでも目安です。
食材の状態、保存環境によって保存期間は変化します。
使用する際はカビの有無や乾燥状態、冷凍の場合は冷凍焼けしていないかなど食材の状態を見たうえで使用するか各自で判断してください。
 
参考文献 下線ありのものはクリックで参考先に飛ぶことができます。
 
 
【3】香西みどり監訳:マギーキッチンサイエンス -食材から食卓まで、共立出版株式会社、2021、PP342-345
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高木駿介

 

管理栄養士
趣味:料理、映画鑑賞(SFやヒーローもの)
食品会社の社会人1年目で休日ではサイト運営と食品テクノロジーについて調べています。

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